2011年3月9日(水) 23:31

『懐かしき与那覇湾・ラムサール条約登録へ』/国仲 洋子

ペン遊ペン楽2011.3.10


 毎夕方、半日遅れで届けられる宮古毎日新聞。トライアスロンやオリックスのキャンプ地としても年々華やかさを増すばかりの宮古島は、新鮮な話題にあふれている。野鳥観察に目覚めたこの頃では、時折紹介されるスクープのような野鳥の写真にくぎ付けである。去年暮れ、何と上地の海岸に飛来したという絶滅危惧種の珍鳥クロツラヘラサギの記事が載った。これにはさすがに胸が躍った。ここ数年、与那覇湾でのマングローブ植樹の記事をよく目にしたが、その効果で餌となる生き物が増えているのだろうか。もしかすると昔のような豊かな生態系に戻りつつあるのだろうか?等と、素人考えであれやこれや思いを巡らせる。


 そんな中、去る1月19日1面の「与那覇湾をラムサール登録へ」の文字が飛び込んできた。掲載されていたのは懐かしい干潟の写真。子供時代は復帰前-という私たちの世代にとって、与那覇湾は思い出がいっぱいの特別な場所である。TVもなければろくな遊び場所もなかったあの頃、干潟は生活の糧を得る場所であると共に、子供たちが泥まみれになりながら時間を忘れて遊べる巨大な広場だった。男の子たちは釣りやカニ捕りに夢中になり、女の子は小エビや貝、小魚、アーサ採りで忙しかった。子供たちのザルやバケツにあふれる獲物は、その日の夕飯のおかずになったりしたものである。今になって思えば物資の少なかった時代から、島民に海の恵みを分け与え守ってくれる宝物のような場所だとしみじみ思う。


 干潟は「命のゆりかご」といわれている。一見すると何もなさそうに見える泥の平地だけれど、たくさんの生き物が息づいている。淡水と海水、酸素、太陽の光が、藻類、バクテリアやプランクトン、そしてエビ・カニや貝、小魚など無数の小さな生物が生きる場所を作り出し、さらにそれらを食べる野鳥や人間の営みを支えている。試しに干潟の石をひっくり返してみると、たくさんの生き物に出合うことができる。子供の頃は、石の下の潮溜まりを飽きずに眺めていたものだ。


 また干潟は、天然の浄化フィルターの役割を果たしているといわれる。人間が川や海に流す生活排水から発生するプランクトンを干潟に住む小さな生き物たちが食べてくれるため、汚れた水は再びきれいになるのだという。いわば天然の浄化場であり、遠く海洋の汚染まで防いでくれるらしい。人間が作るそれよりもはるかに強力で安上がりというわけである。


 しかし、その大切な役割は長い間認識されることなく、日本の干潟は戦後、相次ぐ埋め立てと干拓により急速に失われ今やその40%が消失したといわれている。沖縄では復帰の年1972年から、本土にもまして猛烈な勢いで開発や埋め立て事業が進行した。国は近年、干潟の重要性に言及し始めているが、泡瀬干潟などに見るように開発優先の傾向にブレーキがかかる様子はみられない。


 そんな現状に、故郷の干潟もいつかは開発の波にさらされ住宅やビルが建ってしまう日がくるのかもしれない-と、寂しい思いで見つめていた日がうそのような『与那覇湾をラムサール登録へ』のニュース。登録されたからといって自然そのものが変化することはなくても、島民に与える影響は大きいはずだ。1999年に那覇市の漫湖が同条約に登録指定されて以後、市民の環境への意識が急速に高まったように。


 漫湖公園にも毎年11月ころになると、遠く北朝鮮や中国北部からクロツラヘラサギが越冬にやってくる。そしてここ2~3年、与那覇湾にも飛来するようになった。もしかして、われわれ人間よりもクロツラヘラサギの方がラムサール条約のニュースをとっくに知っていて、早々に下見にやってきているのかもしれない?
 (宮古ペンクラブ会員・看護師)