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人生雑感
2011年5月28日(土)22:30

「親と子の間に要求の対立が発生した場合、どう解決したらよいのか」

日本親業協会親業インストラクター 福里 盛雄


1 どうして、親子間に欲求の対立が発生するのか

 子供は親の分身であっっても、それぞれ独自の人格者である以上、各自の生き方をするのは当然です。そのために生きていく過程において、親子間に意見の対立すなわち欲求の対立が生ずるのは自然です。欲求の対立があるから悪い親子関係だとは必ずしも言えません。欲求の対立があるから、その親子関係は建設的であり、人間として社会生活を営む力が養成される機会ともなります。問題は、親子間の欲求の対立にあるのではなく、その対立の解決の仕方の善し悪しにあると考えます。欲求の対立の過程において、今まで気が付かなかった相互の知恵の深さに触、親子の絆を強くする機会ともなります。親子間に欲求の対立が生じた場合に、親子関係の崩壊を心配し、見せかけの表面的よい親子関係を繕うとしてはいけません。問題のない解決の仕方が親子関係を崩壊させるのです。外観的には問題のないように思われていた家庭から、新聞等とマスコミに取り上げられる問題を起こす子が育つ例がそのことを教えています。


2 親子間の欲求の対立の理想的解決法(トマス・ゴートン著、近藤千恵訳親業第7章参照)

 親子間の欲求の解決する一般的に考えられている方法としては、第一法として親の権威に子を従わす親勝ち法、第二法として、子の欲求に従って解決する子勝ち法、第三法として双方が満足するように双方の欲求を解する勝負なし法が考えられる。

 第一法の親勝ち法は、親は子に比べて、人生経験が豊かであり、判断力においても子に優っているから親の言う通りにしておけば子の成長のためにもそれが望ましいということが前提にあります。この法では、子の自立心と自己規制の精神が育たないし、子の欲求が無視されますから、親に対し子が不満と反抗心を抱き、好ましくない親子関係が生じる。

 第二法の子勝ち法は、子の欲求に従って対立が解決されますから、いつでも子の言うことが通ることになり、わがままで自分勝手な他人に対する気配りのない無責任な子を育てる危険性を有すると言われています。第一法と第二法はいずれも親子の一方の欲求のみ重視していく、それぞれの欠点があるので、親子の欲求の対立については、第三法の勝負なし法で親業講座では訓練しています。第三法の勝負なし法、この方法は親の欲求と子の欲求の双方の欲求を満足させるように、双方の欲求の対立を解決する方法です。

 例えば、今日は雨が降っていて、父も車で通勤したいと思っています。子供も車で学校へ行きたいと思っています。車は1台しかないので、どちらかが車で行くと、他方は車が使えないことになる。この場合、親子の欲求が対立することになる。そこで、親は子供に、おまえはどうしても車で行きたいのか、と能動的聴き方によって子供の欲求の内容を聞き出し、濡れて行くと風邪を引いて授業を受けることができずに帰ってくるかもしれない。だから、車を使いたいと子供は言う。それは私も状況は同じだ。濡れた洋服のまま勤務することはできない。何か良い方法はないか考えてごらん。いくつかの案を出し、検討して、子供がお父さんを先に車で送って、子供は車で学校へ行くことにしたのです。こうして、親子の欲求の対立は双方が満足する第三の勝負なし法で解決したのです。

 第三法は、子供に相手の欲求に対しても考慮する寛大心を育て、思考力と実行力と責任感を子供に身に付けさせるにも大きな効果を発揮します。社会生活においても、他人との間に意見の対立が生じた場合、自分の立場だけを考えないで相手の立場も考え、互いに妥協して問題を解決し、楽しい明るい社会生活を送ることのできる人間性の土台を築くことを可能にします。

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