03/29
2024
Fri
旧暦:2月19日 友引 辛 
ペン遊・ペン楽
2011年7月27日(水)23:17

アイターンすること、地域で生活すること/高田 みゆき

ペン遊ペン楽 2011.7.28


 私たち夫婦は、アイターンして今年で丸10年になった。引っ越してきた当初は借家住まいで、何人かの地元の方に「住所はどこにあるか?」と聞かれて面食らった覚えがある。「この借家の場所よ」と返事して、「えらいねぇ」と褒められた意味も今ならよく分かる。住民票を移して住民税を払い、地域社会で生活するということ。住民票を移すだけで島を潤すほどの方々とは比べようもないが、何かを還元して自分も恩恵を受けて生活するという当たり前のことが、島だからこそ、より重要になってくるのですね。


 近所を車で走っていると、見知ったおばぁが道端に腰かけてゆんたくしている。ほいっと片手をあげてあいさつする。何日かしてまたゆんたくしている所に出くわす。今度は居合わせたおばぁみんなから、ほいっとあいさつが返ってくる。もう、愉快で仕方がない。自然と、にこにこしてしまう。私もいつか、あんなおばぁになれるかなぁ~と思いながら車を走らせる。

 自治会の班長をしたのをきっかけにメンバーが集まり、地元の集会場をもっと利用しようとグループを作った。自治会の助成を受けて試行錯誤を繰り返しコツコツ活動して3年目になった。メンバーも少しずつ増えてきた。私は、このメンバーとゆんたくするおばぁになるのかなって思うとうれしい。10年たった今も、おばぁたちにみゃーくふつで話されると半分も聞き取れない。あと10年掛けたところでナイチャーはナイチャーのままだろう。でも、生まれて育った京都の21年と、嫁いで子育てした浜松の21年と、いつかここの土になろうと決めた宮古の20年をチャンプルーしたおばぁになっているはず。それはそれで、楽しみな話だ。

 先日、ご近所さんからカゴいっぱいのパッションフルーツをもらった。本土ではパッションフルーツは普通には流通していない。普段の生活の中ではまず見かけることの無いフルーツだ。長期入院をしている友達に届けようと、思った。彼女の善き話相手でもあるヘルパーさんに連絡を取って「幾つかを彼女に届けてください」と送った。入院中の彼女の手に渡った幾つかの実は、甘い南国の香りと共に愉快な話題と和やかなひとときを提供したようだった。ヘルパーさんは、自分の働くグループホームに入所している西表島出身のおばあさんに分けて差し上げたらしい。それはもう、とてもとても喜んで、若い頃のいろいろな話をしてくれたそうだ。

 二人からそんな話を聞いたとき、「これが私の立ち位置なのかな」って思った。私を通して出ていくもの、入ってくるもの…一番初めの「私のうれしい」をいつも「誰かの幸せ」に変えられると思うほど傲慢ではないけれど、たぶん、アイターンして来た人間というのは、外に向かって開かれたドアの一番近くにいる人たちなんだと思う。かなうならば、末永く島にとって善きものを発信し取り入れることのできる人でありたい。
(造形講座指導)

カテゴリー一覧

ID登録でパソコン、タブレット、スマートフォンでお手軽に!