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ペン遊・ペン楽
2011年11月23日(水)23:00

それぞれの役割/小川 京子

2011.11.24 ペン遊ペン楽


 4年にわたる構想がやっと実り、森万里子さん作品の一つサンピラーがこの宮古島の七光湾の岩の上に鎮座した。太陽の加減を見極め、ある日、森さんとその地を訪ねた。なんとサンピラーが太陽の光を集め、自身で輝いていた。まるで森さんへ自然がご褒美をくださったかのようだった。


 私は、このプロジェクトに関わって、その流れをつぶさに眺めてきた。森さんの宮古島に対する並々ならぬ思いを垣間見た私にも大きな変化が訪れた。森さんのこのプロジェクトに対する動きは大変丁寧で、作品はもとより実現するまでの動きは大いに私の学びとなった。

 私は今年2月、古里に居を移すことにした。父の他界がキッカケとは言え、私を大きく動かしたのは、森さんのプロジェクトに関わり、足しげく宮古島に帰ったことが大きな要因だ。これまでも生まれ島をこよなく愛してきたが、このプロジェクトによって私の中で大きな夢が膨らんできた。

 あるときから、私はアートの素材としてクバを使用してきた。バスケットを原始工芸と位置づけ、手のみでかごを作るという表現活動である。この地球上の魂を学ぶ行為はそれぞれであるが、この世の植物は種から芽を出し、木になり、花をつけ、また実になる。そのサイクルは人間の魂を学ぶ一つの方法に思える。

 この宮古島に来て10カ月が過ぎようとしている。島は新参者の私を温かく迎えてくれた。たまに戻るスタンスと違い、しっかり地に足をつけて活動すると景色は一変した。宮古島を愛し、しっかりと足元をみつめ頑張っている人が多いことに改めて気が付いた。他県から、何かに導かれるように移り住んで、模索している人もいる。ユニークで熱き人々と多く出会った。この島はすごい! 私の思いはますます膨らんでくる。

 もう一つ気が付いたことがある。自然素材でモノづくりをしている私が、島に来て改めて、心を動かされた素材がある。世界に誇れる宮古上布の素材であるチョマ。宮古の風土にとても相性が良くすくすくと育つこのチョマを通して多くの人と関わりを持つことができた。そこで強く感じたのが素晴らしい人材である。

 多くの人々がチョマに魅了され、これに関わり、働く意欲もある。ところが、社会の動きは、それらの人々のエネルギーをうまく受け止めているようには見えない。素晴らしい人々のエネルギーを、社会はうまく循環させているのだろうか? その循環をうまく動かしたとき、宮古島の流れが変わるように思えて仕方ない。

 宮古島に居を移し、新たな目で見た率直な今の気持ちである。私にもできることがきっとある。宮古島に住む人々にそれぞれ大きな役割がきっとある。ニューヨークからやってきて、宮古への愛を語る森さんに負けないくらいの愛と役割を担っていきたい。私の夢も着実に進んでいる気がしている。
 (バスケットアーティスト)

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