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私見公論
2012年3月2日(金)22:34

今、問われる 自立への気概と共生の心/岡村 一男

私見公論21


 雪国の厳しい冬を思うと、南の島の魅力が一層際立ち、島への愛着となり、美しい地域づくりへの意欲を掻き立てられる。


 先日、「椿まつり」を観る機会があった。観賞と実利を兼ね、花と緑で島中を覆い、島のブランドにまで高めたいとする有志たちの心意気に共感を覚えた。帰りしな、市上野支所庁舎の庭に咲きほこる花々に心を和ませ、美しい職場環境づくりに励む職員たちの意を範とし、労を多とする思いであった。

 さて、東日本大震災から間もなく1年、今なお、復興の目処さえ立たない惨状と不自由な暮らしぶりに心を痛め、人間の無力さと、対応の遅れ、政治の混迷に憤りさえ感じる。軌を一にして、沖縄も復帰して苦節40年、基地の重圧は相も変わらず、県民の自立への願いを阻み、時間だけが流れた。見え隠れする米国による占領意識と永田町・霞が関の沖縄への差別意識だけが漂うのは許せない。民主主義の最大の敵は差別であり、その大道は民意の尊重である。

 未曾有の大災害を機に日本人のものの考え方や生き方に大きな変化が起こりつつあることが指摘されている。豊かさ便利さのみを追求した代償は大きく、今、私たちは不自由を常とし、倹約を旨とする生き方にあらためて価値を見い出し、これからの生き方を真剣に考える時が来たようである。

 国や自治体は「自立すること」を大きな政治目標に掲げた。県や市町村は新年度を「新生沖縄を創造する特別な年と位置づけた。その実現を可能にするのは政治や経済や教育や文化だけではない。まさに個々人の「自立への気構え」こそがカギである。

 去る1月に行われた新成人についての意識調査の中で、「国の将来をどう思うか」の問いに約8割が「暗い」とこたえた。一方で、同じ割合の若者が、「自分たちの世代が日本を変える」という力強い回答もあった。若者たちに明るい展望を提示できなかった政治や教育や大人社会の責任は重い。若い世代が自国の未来に明るい展望をもたないことこそ国家の危機であろう。

 国の現状を憂えるフレーズ(語句・表現)は数多くある。その裏にあるものは高度情報化や戦後教育、そして豊かな社会がもたらした多くの負の遺産が複雑に絡み合って国の将来を危うくしていることは確かであろう。

 歴史に学ばない者に明るい未来は拓けないという。それならば過去の歴史に学び、現状を反省し、未来を拓く手だてを考えることが私たち個々に課された喫緊のテーマではあるまいか。わが国の現状を存亡の危機ととらえるなら、過去の歴史の中にこそ日本再生へのヒントがあるにちがいない。

 世界には多くの国や文明が興り、繁栄し、衰退し、そしてあるものは亡びた史実を私たちは学んできた。消えた多くは戦争や武力等の外敵によらず、国内の政治の劣化や、自立への気概を忘れた個人の生き方やモラルの低下によって内部から崩壊していった歴史の教訓に学ぶべきときのようである。

 わが国は敗戦という厳しい現実を体験した。その混乱の中でも民族の誇りと独自の文化までは失うことはなかった。戦後史の重要な多くの場面に立ち合った一人に白洲次郎がいる。当時、雲の上の存在として最も恐れられていたGHQのダグラス・マッカーサーに対し、「日本は戦争に負けはしたが、奴隷になったわけではない。言うべきことは言わなければならない」と公言して憚らなかったひと言がある。

 民族の独立とプライドをかけた勇気ある発言として歴史に残る。残念ながら、今のわが国の政治家や外交にその勇気と力を求めることはむずかしいようである。白洲は「われわれ(日本人)は沖縄の人々にたいへんな借りがある」とのひと言も残している。いまその借りを返すときではないだろうか。

 いま国民に「心の敗戦」を危惧する声がある。魅力ある国、真にしあわせな地域づくりのための課題が明らかになったような気がする。

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