04/20
2024
Sat
旧暦:3月12日 友引 甲 
ペン遊・ペン楽
2012年3月28日(水)23:31

直なる心/近角 敏通

2012.3.29 ペン遊ペン楽

 

 「直なる心は明けく輝く心ぞ」(『宮古史伝』11頁 慶世村恒任著)風水のよい地に天の岩柱が投げられ成った宮古島に、人の世を建てる命を受けた古意角の神が天下るとき、行く手に立ち塞がる鬼共に言い放った言葉である。神は鬼共を護衛の神共が力で征伐することも「悪」とした。と、鬼共は、神の心をあらわしたので、「皆うごなわり(集まり)て天下りましました」とある。宮古島の元々に、明るく輝く直なる心があることは、誠にありがたいことである。その心を自然の内に、人の内に、食の内に感じてきた14年間であった。


 生まれてから20年間は学生期で、幼さと気負いの中にいた。それから40歳までの20年間は「共に学ぶ」中にいた。障がい児と出会い、心の殻がはらわれ、学校の教員になり、共に焼き物を作り、共に劇舞台を作り、共に自然の中を歩いた。40歳から、やがて還暦を迎える来年までの20年間は「働く」中にいた。普通学級4年間で子どもたちと共に文学を味わい、学校を辞め、広い世界に飛び出し、1年後、この島に流れ着き、島の自然の恵みのもとで、働かせていただいてきた。

 今、これからの20年は、過去の二つの20年間を統合するときだと思っている。すなわち、「共に働く」。今まで培ってきた、ハーブの栽培・食品加工・工芸加工の仕事。自然探訪・美化の活動。これらを障がい者とも共にしていくということである。

 この2月、兄を亡くした。その兄と、老齢になった父・母を見舞った昨年の暮れ、宮古に帰ってきた自分が少し変わっていた。ある決意をしたのだ。コミット! やりきるということ。畑のハーブが食材をいかすおいしい料理を作ること。畑のハーブを漉いて紙を作ること。子どもと共に漉くこと。旬をのがさずハーブをペーストにすること。ローゼルのコンフィ・シロップ加工の極意を妻から学ぶこと。うまいお茶を入れること。ハーブ香炉を炊くこと。うまいハーブ酒を作り味わうこと。子どもと遊ぶこと。妻の染めを観ること。小学校の新聞を丁寧に作ること。海岸や入り江沿いの東屋・遊歩道美化の活動を放課後教室の子どもたち・大人と共にすること。島を訪れた方の心を感じながら、自然を探訪し、ハーブ料理を味わっていただくこと…。

 この前、いらした方からのメール。「伊良部は不思議な場所です。こんなに魅了されたのは20年以上前に来た、あの頃の沖縄以来です。土地の気を感じ、祈りを捧げる時間をいただきました」。素直に、力に頼らず、自然にいかされ、人びとが十全に生きあっていく心は、日本や世界の所々で明るく輝いている! 今が時代の転換期である。漲水神社に祀られた宮古島の守護神・古意角の神の言葉をかみしめて、暮らしていきたい。「直なる心は明けく輝く心ぞ」。
(宮古ペンクラブ会員・農業)

カテゴリー一覧

ID登録でパソコン、タブレット、スマートフォンでお手軽に!