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行雲流水
2012年7月16日(月)23:04

「花は咲く」(行雲流水)

 地震に津波、それに人災ともいえる原発事故が加わって、東北地方を襲った災害は筆舌しがたい悲惨なものになった。そんな中でも、被災地の人々は整然と行動した。また、多くの国民が救援のためボランティア活動にはせ参じた


▼この事態に、自分のできることで何か役に立ちたいと考えた人たちもいた。園芸家の柳生真吾さんは「スイセンプロジェクト」を立ち上げた。彼は、全国各地の庭で育てられた水仙の球根を送ってもらって被災地で配った。全国から集まった13万個の球根が、この春、美しい花を咲かせたということである

▼詩の朗読で被災地の人々を励ますグループもあった。岩手県の生んだ詩人・宮沢賢治の「雨にも負けず」や「永訣(えいけつ)の朝」がよく朗読された。宮沢賢治は書いている。「世界がぜんたい幸福にならないうちは個人の幸福はあり得ない」

▼NHKの、復興を応援するテーマソング『花は咲く』が心にしみる。歌う人たちが胸に抱く一輪の花に生き残った人と亡くなった人の記憶や思い、希望が託されている

▼「亡くなった人たちの苦しみや無念さは想像することしかできない」という友人の話。片思いの人を探してほしいという女の子の声もあった。悲惨な現実の渦中でも「人を愛する」ことに一筋の希望を感じて、岩井俊二は「花は咲く」を書いた。作曲をした菅野よう子は「聴く人の気持ちを載せることのできる透明な器であるような曲を心がけた」と語る

▼「思想を支えるには詩(想像力)がなければならない」(アラン)。

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