2012年7月14日(土) 23:13

シリーズ 島のくらしと環境<16>

与那覇湾、さらなる環境保全へ/30年前、淡水湖計画を白紙撤回に


ヘドロを掘り起こす市クリーン指導員の金子導夫さん

ヘドロを掘り起こす市クリーン指導員の金子導夫さん

 ラムサール条約に登録された下地の与那覇湾。平良の久貝・松原、下地の川満・上地・与那覇集落をつなぐ湾内は約600㌶。この豊かな湾内は、魚介類はもとより海ブドウやモズクなどの海草類も豊富で、周辺住民にとっては海の幸の宝庫として大事に活用されてきた。ところが、1970年代、農業用水として利用するため与那覇湾淡水湖化計画が浮上し、漁業、農業者が対立する形で賛否両論、島を分けての大論争となった。



 計画は約10年におよぶ調査、計画策定で農家からの同意を取り付けて、1983年までに同作業を終了させ、年に工事着工、10年後に淡水湖を完成させる計画だった。豊かな漁場として久松を中心に利用してきたことから、81年暮れ与那覇湾を守る会(松原玄勝会長)が結成され、翌年10月に漁民360人が乗り込んだ舟120隻が約2㌔の列を成して沖縄製糖付近まで海上デモンストレーションを繰り広げた。この反対運動によって計画が白紙撤回された。


 10年間におよぶ事前調査を受けた後の国のプランが住民の反対運動で撤回されたのは宮古では初めてだという。当時の漁業者が命を張って守ったために、今美しい与那覇湾が現存する。干潟の祭典として毎年行われる「サニツ浜カーニバル」も年々盛んになる。


 一方で、生活排水が海に流れ出し、与那覇集落の一部ではヘドロ化現象が見られる。周辺の林の中には、電化製品などの不法投棄も。こうした現状を鑑み、ラムサール条約登録の意味を改めて考えてみたい。


 特に水鳥の生息地が国際的に重要な湿地として認められた与那覇湾。琉球諸島でも最大規模の海草藻場が広がるともいわれる。正式に登録されたことで、国内外はもとより世界からも注目される。観光への期待も大きいが、その前に湾内や周辺の環境保全をどうするか官民一体の知恵が問われる。