2012年7月20日(金) 22:49

今を生きるわれわれが次の世代に引き継ぐもの(産業)/前里 和洋

私見公論 39


 宮古島の基幹産業は農業である。しかし、台風や干ばつなどの自然災害に為すすべがない。1971年には185日間の最悪の大干ばつが宮古島を襲い、サトウキビ生産が壊滅的な被害を受け離農する農家が相次いだ。農家は抜本的なかんがい対策を行政に求め、日本政府の援助により大規模農業用水調査が実施された。沖縄が本土に復帰した1972年ごろには、水源開発調査結果を下に農業用水確保の方法として「与那覇湾淡水湖計画」が進められた。その規模は、与那覇湾約500㌶を閉め切り湧水を貯め淡水湖化し、約2700㌶の農地へのかんがいが可能とされた。しかし、この計画は与那覇湾やその近海の豊かな海が死んでしまうと多くの漁民を中心に島民が反対した。先人の先を見通す判断と知恵、勇気ある行動は後の世界で初の地下ダム開発による恒久的農業用水の確保につながる。



 今年は沖縄が本土に復帰して40年目、自然豊かな与那覇湾は水鳥の生息地として国際的に重要な湿地に関する条約「ラムサール条約」に正式に登録された。宮古島の美しい自然を次の世代に残すという先人の想いと、引き継がれた与那覇湾の豊かな自然を環境学習の場として活かす環境クラブなどの活動や環境行政の取り組みが高く評価された。今後は、観光産業の資源として与那覇湾の自然を守り、どう活かすか市民と行政の協働的な取り組みが問われる。


 沖縄県のサトウキビは減産する状況で、宮古島は30万㌧前後を維持し、県内でも高い生産量を占める。残念ながら平成23/24年期はサトウキビの生長初期に襲来した台風の影響で激減した。サトウキビ産業を経済面から見ると、経済波及効果は製糖工場、輸送、資材、金融などを含めその試算は生産額の約4・2倍である。平成22/23年期のサトウキビ粗生産額は約68億円、サトウキビを栽培することにより宮古島全体で約286億円の経済波及効果があり、毎年宮古島の経済に大きな影響を及ぼす。しかし、糖価は国際価格の8倍とサトウキビを取り巻く状況は厳しく、今後TPPの影響をサトウキビ生産は受けることが予想される。


 平成15年11月10日、甘しゃ糖合理化調査研究事業検討委員会が、農畜産業振興機構の委託で開催された。委員会は農林水産省と沖縄県関係は翔南製糖宮城会長(当時)、琉球大学上野教授、沖縄県担当と私で構成され、鹿児島県関係者も参加した。目的は、甘しゃ糖業の集荷製造コストの一層の削減を図り甘しゃ糖蜜の高度利用に関する調査研究である。基本構想は、甘しゃ糖蜜は製糖工場の立地する地域で高度処理し有効活用する。その方法は、甘しゃ糖蜜使用バイオエタノール製造等であった。


 宮古島では、環境省事業「エコ燃料実用化地域システム実証事業」が、サトウキビ由来の甘しゃ糖蜜を活用してバイオエタノール製造事業が進められた。そして、事業関係者の方々の努力で実用化のめどが立ち高い成果を挙げた。しかし、国の予算措置は平成23年度で終わってしまったため、事業の継続を宮古島市と沖縄県に期待したい。また、その成果はサトウキビを砂糖を生産する目的だけでなく、環境エネルギー作物として位置づけることで宮古島のサトウキビの存在価値を高め、環境産業を創出し雇用効果につなげることが可能ではないだろうか。


 今後は環境、特に地下水に配慮した農業を産業の中心として自立した経済構造に移行することが問われている。観光客消費額は年々増加傾向にある。東洋一といわれる観光資源のサンゴ礁の海と共に、サトウキビやマンゴーなど癒やしの空間を提供するグリーンツーリズムも要因である。宮古島の公共事業の多くは農業基盤整備事業や地下ダム開発関連事業が占める。この公共事業や観光産業とも農業が基盤である。そして、宮古島の地理的有為性を価値として、トライアスロンなどのイベント産業も発展継承し、基幹産業である農業と同様に次の世代に引き継ぐのが今を生きるわれわれの使命である。