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行雲流水
2013年4月29日(月)22:33

「教育を守る」(行雲流水)

 カントが『実践理性批判』で説いた人格の絶対尊厳の論を、ペスタロッチは教育の古典である『隠者の夕暮れ』の冒頭でこう述べている。「人は王座の高みにあっても、木の葉の屋根の陰に住まっても、その本質において同じである」。ペスタロッチのこの思想を福沢諭吉は『学問のすすめ』の冒頭で「天は人の上に人を造らず、人の下に人を造らず」と述べて、独立自尊の精神をとなえた


▼個人の尊厳を重んずるこの精神は、主権在民と平和主義とともに基本的人権の尊重を柱とする日本国憲法に生かされている。さらに、その精神にのっとり教育基本法が制定された

▼その思想に沿って教育は「人格の完成を目指して」、平和で民主的な国や社会の形成者として、発達課題を充足させ、普遍的で、個性豊かな心身ともに健康な国民の育成を期して行われる

▼現実の教育現場での教育の成果は大方教師の力量にかかっている。その際、政治に求められるのは、学問の自由や、創造的教育の自由を保障することである。また、格差社会が教育に及ぼす深刻な影響が進んでおり、奨学制度の拡充などで、教育の機会均等を推進する施策が求められる

▼ところが現実には、教育への政治介入が容易になる「教育委員会改革」がもくろまれている。八重山における教科書問題がある。偏狭なナショナリズムをあおる動きもあって、教育は危機に瀕している

▼人類多年に努力の成果である普遍的価値を踏まえた、戦後教育の理念に沿った教育の一層の充実で、この危機を克服していきたい。

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