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ペン遊・ペン楽
2013年5月8日(水)22:34

ランニングの楽しみ/本村 佳世

2013.5.9 ペン遊ペン楽


 子どもの頃から運動全般が苦手で、体育の成績はいつも悲惨だった。特に走ることに関しては、情けない記憶ばかりである。鬼ごっこでは万年鬼だったし、かけっこはいつも大差をつけられてビリ。中学生になっても100㍍を走るのに20秒以上かかり、持久走では遅いからと居残り。高校のときに50㍍を10秒弱で走り、私にしては速いと喜んでいたら「本気出してそんなに遅いはずがない、もう一度走ってみろ」と先生から言われてガックリ…なんてこともあった。


 その私が、最近ランニングにはまっている。それどころか、この半年でフルマラソンを2度も完走した。かつての私を知る人は、さぞかし驚くだろう。自分でもびっくりしている。

 きっかけは、東京の友人2人を沖縄旅行に誘ったところ、「じゃあみんなでNAHAマラソンに出よう」という方面に話が展開したことだった。「大丈夫、今からでも練習すれば絶対完走できるよ!」という説得についついその気になり、出ると約束してしまった。

 かくして体育の授業から解放されて以来十数年、運動らしい運動をしたことのなかった私が、ランニングという未知の分野に挑戦することとなった。

 まずは友人たちのアドバイスに従い、ランニングウエアとスニーカーを買いそろえ、家の近所をすこしずつ走ることから始めた。最初は、これまでバスで通過するだけだった、隣のバス停まで。つぎは電車でしか行ったことのない、隣の駅まで。それができたら、もうひとつ先の駅まで…。走れる距離が伸びてくると、身のまわりの世界が線でつながり、自分の世界が広がっていく感じがして、愉快な気持ちになってくる。そのうちどんな遠くへも自分の足で行けてしまうような気さえしてくる。

 なによりうれしいのは、子どものころと違い、走るのが遅くても怒られることもない。気ままに、自分に合った速さで走り続ければ、辛くはならない。運動音痴でもスポーツを楽しむことはできるのだと知った。

 それに、季節の移ろいを肌で感じられるのもランニングの魅力である。走り始めた頃は残暑が続いて苦しかったが、秋は紅葉で染まる木々を眺めながら、冬は燐と輝く星空の下を、春は桜のトンネルをくぐり、初夏に向かう今は若葉の輝きに囲まれて、と、その時期ならではの風景や雰囲気を楽しむ余裕ができてくると、ますます走ることが楽しくなった。以来、週に2~3回、家の周辺を5~10㌔ほど走ることを習慣にしている。

 そうして昨年12月には、友人たちとの約束通り、NAHAマラソンに一緒に出場した。また、先月は茨城県で開催されたかすみがうらマラソンを走った。ともに雨天の中での大会となったのが残念だが、42・195㌔もの長い距離を走り抜いた体験からは、あきらめずに一歩ずつ前に進むことの大切さを学んだ。

 誘われた勢いで始めたランニングだが、意外にも私の肌に合っていたらしい。ランニングを始めてから、もうすぐ9カ月。できないと思っていたことができるようになると、次はどこまでできるのか、どんなことができるのかと試してみたくなる。このあとはしばらく大会に出る予定もないが、いまはただ走ることが楽しくて仕方がない。今度の休みはどの道をどこまで走ってみようか、と地図を片手に思案している。

 私をランニングに誘ってくれた友人たちには、感謝の気持ちでいっぱいである。

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