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2013年5月10日(金) 22:30

「表現の自由」(行雲流水)

 大正時代末期から昭和初期にかけて多くの詩をつづり26歳の若さで世を去った金子みすずの代表作に『わたしと小鳥とすずと』という短い詩がある。その最後の一行「みんなちがって、みんないい」幸せとはいえなかった彼女の短い生涯と思い合わせるとこの言葉には胸が詰まる



▼何らかの物差しを作り上げて、その物差しに合わなければ駄目だと決めつける社会風潮ではなかなか出てこない言葉である


▼社会の風潮を知る手だては新聞、テレビ、ラジオ、インターネット、雑誌といったいわゆるメディアである。メディアから得られる情報は、事実に対して編集者や制作者の価値判断が少なからず反映され、それが社会風潮となりかねない


▼社会風潮に流されたくないと思えば、得られた情報に自分なりの考えを付加することで自分のものにすることができる。メディアから流れる情報が正しいとか、正しくないとかの判断ではなく、自分なりの思いや考えを整える素材とするのである


▼自分なりの思いや考えを人に知ってもらったり、人の発表するものを見たり聞いたりすることも大切なことだ。何かを表現したい、知りたいということはもっとも人間らしい欲求であり、人間の尊厳に関わることでもある

▼みすずの生きた時代は、原敬暗殺事件、関東大震災、大正天皇崩御、昭和改元、3・15事件、世界恐慌といった激動の日本であり、大正デモクラシーが抑圧され軍国・全体主義の暗い影が広がる時代である。閉塞感のする社会にあって「みんなちがって、みんないい」と詠ったみすずの率直な心を大事にしたいものだ。(凡)