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日曜訪問
2013年5月11日(土)22:40

大里 歌彩さん(36歳)/筑紫会準師範

音楽の力を信じて


大里 歌彩さん

大里 歌彩さん

 幼い頃から、ピアノ、琉舞、琴などをたしなんできた。中でも、琴が好きで、宮古高校時代は自分で箏曲部を立ち上げ、全国高校総合文化祭に3年連続出演するなど琴の調べに魅了されていた。音大では特待生として声楽を学び、数々のオペラ公演も体験してきた。ところが、卒業前に、喉にポリープができ、歌えない状況に追い込まれる。そんな時、ある合唱の講師に「今のままだと、30歳で声を無くしてしまう」と言われる。


 「当時、私は天狗になっていた。喉を酷使していた結果だ」と振り返る。大学には内緒で講師のボイストレーニングを受けることによって、徐々に本来の声を取り戻して行く。「あの先生に出会わなかったら、おそらく歌どころか声さえも無くしていた」と話し、今では、琴を弾きながら自ら歌うという特殊な技能も身につけた。

 以前は音楽の教師になることが夢だった。宮古で教育実習を受けた時、尊敬する恩師に「慌てて教師になることはない。社会的な経験を積んでからでも遅くない」と言われ、専門分野に打ち込むことができた。こうして、夫の出身地神奈川県で自宅音楽教室を運営しながらピアノや琴、声楽講師として後進の指導にも力を入れて来た。順風満帆の音楽活動は、東日本大震災で状況が大きく変わった。放射能汚染の問題は神奈川県まで及んでいた。日に日に深刻になる中、一人息子(小1)の成長を優先することにする。苦渋の決断を迫られ、宮古島に帰って来た。

 あれから1年、持ち前の明るさと身に着いた音楽の力で、女声コーラス「AYAGU」を立ち上げた。「子育て真っ最中の転勤族や移住者が多い。子連れなので、週2回の定例日は保育園のようなにぎやかさ」と笑う。選曲もわらべ歌や唱歌を多く取り入れ、子どもたちも歌えるようにした。「音楽があったから、今の深刻な状況を乗り越えることができた」と話し、琴演奏による学校訪問の活動も始めた。

 
 下村(旧姓・大里)マキ(しもむら・まき)1976年8月6日、平良生まれ。昭和音大短期大学音楽科声楽コース・同大専攻科・同大研究科オペラコース卒。「沖縄のうた」や「Ave Mariaコンサート」「マザーズコンサート」などを企画し10年間毎年行ってきた。音大で声楽を学びながら、箏曲の沢井一恵氏に師事。後に筑紫会の田中歌澄氏の元で琴の準師範免除取得、雅名・大里歌彩で活動する。相模原市、座間市で委託講師として中学校の琴の授業を受け持つ。2012年3月宮古島移住。夫・昭雄さんとの間に1男。

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