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ペン遊・ペン楽
2013年6月10日(月)22:37

ミャーク・フツ/久貝 徳三

2013.6.13 ペン遊ペン楽

 ここでいうミャーク・フツとは、宮古方言のことである。琉球新報のカルチャーで、野原優一氏の「宮古方言講座」を受けたということもあって、宮古方言のことを気にするようになった。


 「ミャークフツ」は、沖縄方言の中でも、独特の響きをもつ言葉である。沖縄方言が五十音で書き表せるのに、ミャーク・フツはそれができない。そのため正確な表記法はなく、五十音だけを使って文章に残せないのである。

 発音を書き現わす手段としては「万国共通発音記号」というのがあるが、ミャーク・フツには、これでも書き現わすことのできない独特な発音がある。

 言葉は「使わないと消え去る」といわれることから、宮古文化の中で育った者として、その衰退に一抹の寂しさを感ずる。

 例えば魚のことをミャーク・フツでは『●(●はスに○)ウ』と言うが、これを宮古以外人はどのように発音するのか。

 ところでこのミャーク・フツ、宮古群島内でも地域によって、多少のぶれや抑揚の違いがある。使っていた井戸に使う言葉が違うというのである。しかし、宮古群島内であれば、意志の疎通はできるのではないか。

 もう一つ、言葉は時代と共に変化し、新しく使われている言葉もある。その一つが「サイガ」である。「○○ですねえ」ということを言い表した言葉で、とりわけ平良市内の女子中学生が好んで使っていたため、ついには「サイガ族」といわれていると聞いた。

 しかし、宮古の言葉を論ずる場合、取り上げられるのは、得てして正確な発音表記をどうするかということで、多くの学者が取り組んでいるようだが、共通する表記法を決めるのに難渋しているようである。

 仲原善忠氏と新里幸昭氏の共著に、宮古島の史歌を書き残した「宮古島の神歌」という著作があり、ニコライ・A・ネフスキー氏の宮古の歌謡を書いた「宮古のフォークロア」という書籍があるが、いずれも宮古の言葉をローマ字にして、横書きにしている。このように書かないと、ミャーク・フツにはならないのか。

 ミャーク・フツは、その表現法もさることながら、私は、言葉の発音にも興味がある。例えばネズミのことを、平良地域では「ユムヌ」と言うが、城辺辺りでは「ユムラ」、薪のことは「タムヌ」が、「タムラ」。モグラのことを平良地方では「ザカ」と言うが、下地の与那覇では、「ウャザ」と言っている。

 もう一つ、道で出会ったとき交わすあいさつに、「ンザンカイリャー(どこへ行くのか)」と、言われている言葉があるのに笑ってしまった。親しみか、義理として交わしているのか理解に苦しむところである。

 ところで、15日には、市文化協会主催の「方言大会」があり、またネフスキーの研究者で『天の蛇』を上梓した加藤九祚氏が宮古島に来島するという。40年ぶりに来島される加藤氏の講演も実行委員会で進められ、30日に行われると聞いた。これを機会に、ミャーク・フツに関心を持つ人たちが一人でも増え、盛会を祈りたい。
(宮古ペンクラブ会員)

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