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インサイドリポート
2013年7月4日(木)9:00

東平安名崎市有地買い戻し/リゾート計画白紙に

地元保良は自然保護重視

 宮古島市は株式会社「吉野」に2億円で売却した東平安名崎の付け根に広がる市有地(19㌶)を、開発行為が履行されていないことから同額で買い戻すことを決めた。市議会6月定例会で同議案が可決されたことから、7月中には手続きが完了する予定だ。この市有地にはリゾート施設の建設が計画されていたが、地元の保良住民らが反対運動を展開した経緯がある。現在でも「自然や景観はそのまま保全していくべきだ」と開発には根強い反対の声がある。市は「開発計画は白紙」としながらも岬の近くで天然ガスの試掘が行われていることから今後、天然ガス資源が見つかれば地元側とどのような開発を進めていくか模索したい考えだ。


 □自然を破壊するな

 「子や孫に引き継いでいく大切な自然を破壊する行為は絶対に認められない」
 6年前の2007年6月、市議会で市有地売却の議案が可決されたことを受け、地元保良住民らが反対の声を上げた。
 地元に市有地売却の事前説明がなかったことが大きな理由だが、岬の付け根にあるマイバー海岸がウミガメの産卵地であることや、岬周辺一帯には県指定のテンノウメ群落が見られるなど、貴重な植物や文化財が広がっていることも反対運動に拍車を掛けた。

 □長期間の空白

 岬一帯のリゾート開発は、1988年に城辺町(当時)と高松開発(本社大阪)との間で「開発協定書」が交わされ、92年には県から開発許可が下りていた。
 しかし、ゴルフ場開発から長期間の空白が生じ、地元住民の間でもその後の計画はほとんど話題に上ることはなかった。
 市町村合併後、市は財政逼迫などを理由に「売却代金はもとより、開発されれば固定資産税や雇用などの波及効果が大きい」として市有地売却を決定した。
 議会も「旧城辺町時代に地域住民との合意形成は図られており、それは今も生きている」として売却を認めた。
 土地を購入した吉野はホテル着工に向け準備を進めていたが、国際的な金融危機の引き金となったリーマンブラザーズの経営破綻や東日本大震災による国内経済の影響を受け、着工期間の延長を2度、市に申し入れた。
 市は吉野の要望を承認したが、3度目の延長は認めないとし、買い戻しに動いた。

 □天然ガス絡み

 市が市有地を買い戻したことにより、地元側が懸念した開発行為はいったん白紙に戻った。
 しかし、同岬に続く海岸沿いでは天然ガスの試掘作業がもうすぐ始まる。
 市は天然ガス資源が見つかれば自給エネルギーの開発のみならず、製品開発や温水利用によるスパ(温泉)開発などあらゆる可能性を県とともに探りたい考えだ。
 下地敏彦市長は6月の市議会一般質問で、東平安名崎周辺は開発の可能性が高い地域という認識を示した上で「天然ガスの試掘を含めて、どういう形の整備をしていくのか今後、地元の人たちと協議して進めていきたい」と答弁した。
 天然ガス試掘現場近くでは、民間企業のリゾート開発計画もある。事業着手は未定だが、天然ガス資源が見つかれば計画が一気に進む可能性もある。
 地元出身の市議、下地博盛さんは「東平安名崎一帯で再びリゾート開発が浮上すれば、自然保護の観点から反対運動が起こる可能性はある」と指摘。「住民にきちんと計画を説明して理解を得ることが必要」と話した。

 □不便でも自由望む

 岬周辺の自然保護を望む声は今でも多い。
 保良に住む平良長勇さん(74)は「開発して便利になるより、不便でも良いから地元の人が自由に出入りできる場所であれば良い」と話す。
 地元住民の生活の場だった保良ガーが整備されたことで、島外からの利用客が増え、以前のように自由に海岸を利用できなくなったことを嘆く地元住民は多い。
 そういった背景から、これ以上の整備や開発に慎重な考えを持つ住民がいるのも事実だ。
 速やかな情報公開はもちろんだが、身近な生活環境や自然環境への関心が高まっていることも踏まえ、地元住民の感情や生活圏にも配慮した開発が望まれている。

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