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行雲流水
2013年10月1日(火)9:00

「知の逆転」(行雲流水)

 「知」の巨人たちの言葉は刺激的で、大方は常識的なものの見方や感じ方を逆転させて、真実に迫ってみせる。『知の逆転』(NHK出版新書)には文明論でピューリッツァー賞を受賞したダイアモンドや遺伝子の二重らせん構造を解明したワトソン、アメリカの覇権主義を厳しく批判する言語学者のチョムスキーたちの、独創的な調査・研究と深い思索に裏打ちされた言葉が、専門分野だけでなく、政治や経済、教育や文化、情報化社会の未来等について語られている

▼「西欧の成功はいくつかの幸運な地理的条件が偶然重なったからで、ヨーロッパ人の生来の能力が他の地域の人々より勝っていたからではない」。個人の能力の開花については「素質」×「環境」によるとするのが一般的だが、「経験が遺伝子の発現を促す。すなわち遺伝子の発現そのものが環境によって左右される」と語る

▼教育は単なる試験のための教育ではなく「もっと積極的に好奇心や想像力、心の自立ということを刺激すべきだ」

▼インターネット時代。「5歳の子どもは彼の祖父ができなかったことができる。ひるがえって、子どもは祖父が持っていた文学的な高み、感情的な深みに到達しえないだろう」

▼例えば環境問題は無いとキャンペーンを張る。「市場世界では利益優先で第三者への影響『外部性』が考慮されない。従って政府による規制は不可避である」

▼彼らに共通しているのは、到達した独創的知見だけでなく、そこに至るまでの「限りなく真実を求める」姿勢だとみた。(空)

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