2014年3月8日(土) 8:55

キビ刈りの季節に思う事/仲里 宏美

私見公論84


 この季節が好きだ。
 サトウキビの葉をサラサラと揺らす風に、鎌を持つ手を休め周りを見ると、腰ぐらいの高さまで積み上げた山の向こう側に、娘が歌を口ずさみながらパーガラを刈っている。左側では母とおばさんが山をつくり、後ろでは息子と夫と父が懸命にキビを倒している。私もまた手を動かして作業にもどる。しばらくすると、「10時休憩」の声がかかる。畑の適当な所に陣取りみんなでおしゃべりしながら、茶をすすったりパンビンやお菓子など好きなものを食べる。私はこのひとときも好きだ。おじぃ、おばぁから孫まで一つの円を作る。そして、おじぃ、おばぁが必ず孫に「これも食べれ」と自分の分も分け与えようとする。そして必ず、仕事ぶりを褒める。「さあ、やるか」おじぃの掛け声で、またキビ刈り作業が始まる。



 私が家族とともに宮古島に引っ越して18年になる。毎年、毎年この光景を見てきた。30代の私と夫、50代の両親に80代の祖父母、それに幼いわが子とのキビ刈りが、今では、50代になろうとしている私と夫、70代になった両親に中学生の息子、いつの間にか大学生になり県外で暮らし始めた娘に、高齢になりキビ刈りができなくなった祖母と、キビ刈りの様子もだいぶ変化してきた。


 これはわが家だけではない。18年前には土・日になると、子どもたち家族が手伝いに訪れ、にぎやかなキビ刈りがあちらこちらで見られていた。しかし、この頃は、機械化が進み、それも少なくなっているように感じる。


 私は内地嫁である。キビ刈りなどもちろん、宮古島に来るまで経験したことがない。たしかに重労働である。しかし私は、この体験から学ぶ事はたくさんあると気づいた。それも3世代・4世代が共に作業することによって…。


 まず一つは、言うまでもなく宮古島の基幹作物であること。このことは学校でも教えてもらえるが、孫たちが祖父母・曽祖父母と同じ時間、同じ場所で同じ作業をすることによって、会話が弾みサトウキビの生きた歴史が語られていく。祖父母や曽祖父母が体験した事、教えられた事、話を聞いた事など生きた言葉で語られていく。


 二つ目は、滅多に見ることのできない大人の働く姿。現代では会社員など自宅以外で働くことが多く、なかなか大人の働く姿を見ることができない。そんな大人の必死になって働く姿を見た子どもたちは何かを感じるであろう。


 三つ目は、キビ刈りを通して仕事の大変さ、素晴らしさを実感できるキャリア教育ではないか。スラを打つ、キビを倒す、パーガラを取り除いて山をつくる、崩れないようにくくる作業。どれをとっても単純で根気のいる作業であり重労働である。そして次の作業の工程を頭に入れ、いかに作業がスムーズに進んでいくか考えながらの作業。子どもたちにはできそうな作業から取り組ませ、ある程度のノルマを与え、仕事の達成感、できなかった時の悔しい気持ちなども経験させていく。


 四つ目は、親子の絆・家族の絆を深める。作業を通して思いやりも生まれてくる。子どもたちが小さい頃は大人が作業しやすいように気遣っていた。それがだんだん子どもたちが祖父母たちに作業しやすいように気遣っていく姿に感動を覚えた。教えたわけでもない。今では、中学生になった息子は部活の合間に少しでも手伝う。大学生になった娘も高校卒業前後の休みを利用してキビ刈りから春植えまで手伝って県外へ旅立った。


 私は今、思う。こんな身近にある昔から毎年行われてきたキビ刈りを通して、子どもたちの健全育成を利用しない手はないのではないか。一部の学校で行われている援農隊を宮古島全体で行うのはどうだろうか。小学生高学年から高校生まで7~10名のグループを作りキビ農家の手伝いを行う。高齢化したキビ農家の方々の手助けにもなり、子どもたちの健全育成にもつながるのではないかと、勝手に思いを馳せる。実現は難しいだろうか。とりあえず、キビ農家でない息子の友達を誘ってキビ刈りの素晴らしさを伝えていこうと思う。


 仲里 宏美(なかざと・ひろみ) 1966年生まれ。宮崎県えびの市出身。89年琉球大学教育学部卒業後、那覇市内の幼稚園に勤務。夫の勤務に伴い96年宮古島に移住。2006年より人権擁護委員、07年より母子保健推進委員を委嘱され現在に至る。城辺で、夫と子供、夫の両親と暮らす。

  • 宮古島の人口

    令和元年12月1日現在

    宮古島市 54,792 人
    27,602 人
    27,192 人
    世帯数 27,848 軒
    多良間村 1,127 人
    604 人
    523 人
    世帯数 516 軒
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