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インサイドリポート
2014年3月23日(日)8:55

「再任用」再び継続審査

「市民感情」を重視/市議会
法やルールとの板挟みに

 宮古島市議会(真栄城徳彦議長)は19日の最終本会議で、退職した市職員を再び市の職員として採用する「再任用に関する条例」制定を12月定例会に引き続き継続審査とした。さらには、高度な専門知識を有する職員を一定期間採用する「現行条例」も廃案とし、再任用に関する全ての道を閉ざした。地方公務員の再任用については、希望する職員は再任用することを政府が閣議決定し、未だ条例を制定していない自治体においては県を通して速やかに制定するよう求めている。この趣旨を踏まえ市は再任用に関する条例を議会議決を得て制定したいところだが、議会は市民感情を重く受け止めていることから制定に慎重姿勢だ。

 ■11人が再任用希望

 市は今年3月末に定年を迎える職員46人にアンケートを実施した。
 回答を得た27人のうち、11人が再び採用されることを希望しているという。
 このうち、定数適正化計画や新規採用枠に影響が出る可能性があるといわれる「フルタイム(常時勤務)」を希望しているのは3人だった。
 アンケートに回答しなかった19人の今後の動向や、60歳を待たずに勧奨退職した人も一部対象になることから市では「再び採用されることを希望する人は増える可能性がある」と話している。
 県内11市で再任用に関する条例が制定されていないのは宮古島市と南城市のみだ。
 ただ、南城市では今年度、再任用を希望する職員がいなかったことから制定を見送ったという。宮古島市とは事情が異なっている。
 ちなみに全国の市・特別区においては93・9%(昨年3月29日現在)が制定済みとなっている。

 ■「職安に行け」

 再任用に反対する与党議員らは、それを希望する職員に対し「仕事がしたければ職安に行けばいい」「公務員は役所でしか仕事が出来ないのか」などと厳しい声を上げる。
 その背景には「公務員は民間と比べ優遇されている」などといった「市民感情」を無視することができないからだ。
 市職員採用試験には例年400人を超える申し込みがあり、倍率は約20倍という狭き門だ。
 ただでさえ高い倍率が、再任用の制定で新規採用枠が縮小され、さらに高まる可能性がある。
 このことが「将来は我が子を地元の役所に就職させたい」という親たちの懸念材料として広がっている。
 与党議員の一人は「市民から再任用に対し厳しい意見があり、条例制定には反対せざるを得ない」と話す。

 ■退職金2000万円

 議員が言う「市民感情」とは、民間企業とは比べものにならないほど高いボーナスや退職金の支給もある。
 退職金は退職時の基本給や勤務年数によってそれぞれ違うが、市総務課によれば勤続年数30年で月額給与40万円の課長級は約2000万円が支給される。
 昨年度は定年、勧奨を合わせて43人が退職したが、全体支給額は9億9700万円。単純計算だと一人当たり約2300万円が支給されたことになる。
 今年3月末に定年を迎える職員は46人(勧奨1人含む)で、市総務課によると「全体支給額はまだ計算していないが、前年度とほぼ同額」と話している。
 同課では定年退職者がピークとなるのは、2016年度の51人とみている。

6月定例会で結論か/議論沸騰なら臨時会開催も

 ■市長「責任は議会に」

 「どう対応するかと言われても何もできないとしか言えない」
 議会が再任用に関する条例制定を「再継続審査」に、現行条例は「廃案」にしたことに下地敏彦市長はマスコミにこうコメントした。
 若者雇用や市の定数適正化計画への影響については「議員が懸念するのは理解できる」としながらも「自分たちの実情に合わないからといってもきちんと受け止めるが本筋だ。法の秩序と体系は守らなければならない」
 与党などが反対したことも納得がいかないのだろう。
 4月からは退職した職員の再任用ができなくなることから、再任用を希望した職員が訴訟などに踏み切る可能性もある。
 下地市長は「私たちは希望する職員がおれば再雇用すべきだと提案したが、議会は継続審査だという。責任は議会が取るべきでしょう」と語った。

 ■議長「6月には結論」

 真栄城議長は「議員が懸念するのは正職員としてカウントされること。また、期末手当も出るという条例は受け入れがたいということだろう」と話す。
 集中改革プランの中で職員の定数適正化計画が策定されていることや、若者の雇用も含めて再任用を認めるかどうかは「もっと議論や熟慮を重ねるべき」とした議会の判断には一定の評価をした。
 一方で「フルタイムを認めたくないというのが我々の本音。しかし、短時間勤務を希望する人を完全否定するわけではない」とも話す。
 市当局が、再任用する際「原則短時間勤務とする」などとする「付帯条項」を盛り込めば、議会も賛成に動くのではないかとの見方を示した。
 「議会としてこの条例を完全に廃案にすることは考えていない」と述べるなど、当局と議会が互いに歩み寄れば、次の6月定例会には結論が出る可能性を示した。
 「当局は『議会にボールは投げられた』と言っている。だからこそ慎重審査が必要」と語った。

 ■法への抵触明確にせず

 定年退職者の再任用については、地方公務員法第28条の4で「1年を超えない範囲内で任期を定め、常時勤務を要する職に採用することができる」などと明記されている。
 野党の亀濱玲子、上里樹の両氏は19日の最終本会議で、現行の条例を無くすことも含め「閣議決定や地方公務員法との兼ね合いはどうなる」と質問し、地方公務員法に抵触する懸念を指摘した。
 再任用に関する条例を審査し再継続審査にした総務財政委員会の嵩原弘委員長は「宮古島市は合併して誕生した市。離島でもあり、他自治体とは違うところもある。条例を制定しない市や検討中のところもある」などと答えるにとどめ明確にしなかった。
 再任用に関する条例については議会が「閉会中の慎重審査を要する」としたことで、結論を先送りにしたが次の6月定例会では何らかの結論を出さなければならないだろう。
 ただ、再任用に関して、対象者や市民から議論の機運が高まれば、6月定例会前に臨時会を開いて対応することも考えられる。
 法やルールを守ることで責任を果たしたいとする行政側と、市民感情に配慮する議会側の今後の対応が注目される。
 市職員の再任用に関する条例 公的年金の報酬比例部分の支給開始年齢が新年度から段階的に60歳から65歳に引き上げられることに伴い、無収入期間を生じさせないよう新年度から継続勤務を希望する定年退職職員を再任用とすることを政府が閣議決定したことを受け、提案された。65歳未満の定年を定めている民間事業主に対しても65歳までの雇用を確保するため、継続雇用制などの措置を導入することが義務づけられている。

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