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行雲流水
2014年4月15日(火)8:55

「ヘイト・スピーチ」(行雲流水)

 怪獣はいつでも「地球の平和」を脅かす敵である。それをウルトラマンなどの超人が倒す。ところが、「敵」怪獣は手を変え、品を変えて現れ、無くなることがない

▼詩人の長田弘はこう考える。「敵」がなくならないのは、私たちが日常的に「敵」を必要とする生活をしているからで、今日、「不安」がそれを不断に再生産している。例えば、不安は怪獣「敵」を滅ぼすために強力な破壊力をもつミサイルや戦闘機をつくりだすが、疑心暗鬼は亢進して「敵」はいっそう強力によみがえり続ける

▼排外主義的デモや、ヘイト・スピーチと言われる憎悪表現や差別扇動も「敵」をつくりだす「不安な時代」の反映であろうか。近年、朝鮮等、民族的マイノリティーへの排外主義的デモが頻繁に行われているとメディアは報じている。ヘイト・スピーチの内容も、「人間のでき損ない」、「死ね」、「ゴキブリ、ウジ虫、朝鮮人」などと過激化している。京都朝鮮学校襲撃事件では、子どもたちの在校中、校門に押しかけ、拡声器でがなりたてている

▼ヘイト・スピーチの根は、差別構造の中で歴史的に形成されたものである。そして、例えば、ユダヤ人に対して繰り返されるナチスのヘイト・スピーチは数百万人に対するジェノサイド(集団殺害)につながった

▼昨年の米人権報告書は北朝鮮の人権侵害や中国の政治腐敗に抗議する人々への弾圧と並んで、日本におけるヘイト・スピーチを取り上げ、懸念を表明している

▼自らつくり続ける怪獣と戦うことで、怪獣が絶滅することはない。

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