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インサイドリポート
2014年5月25日(日)8:55

太陽光発電受け入れ可能量超過問題

「エコの島」に黄信号/国の買い取り制度に限界

 「エコの島」で、太陽光発電という再生可能エネルギーが行き場をなくそうとしている。宮古島電力系統における沖縄電力の太陽光発電受け入れ可能量が限界に迫っているためだ。売電を希望する事業者(市民)は沖縄電力と売買契約を結べない状態が続く。離島の再生可能エネルギー事業に限界が見え始めた。

 ■「想定外」の発電量

 太陽光発電の受け入れ可能量が、将来的に限界に達することは沖電も想定していた。ただ、そこに至るまでの時間が「想定外」だった。想定をしのぐペースで発電量がぐんぐん上昇した。
 「電力の全量買い取り制度が始まってから2年とたたないのに、宮古と久米島は早かった」と沖電幹部は言う。宮古島の太陽光発電量は、もっとなだらかに増えていくことを見込んでいた。
 結果として沖電は売電を希望する事業者との契約をいったん保留。その数は今月1日現在で約190件に及ぶ。この先何件と契約できるのか、見通しは立っていない。
 受け入れ可能量を超えると電力の安定供給に支障を来す。これは出力が不安定な太陽光発電が招く物理的な障害だ。このような障害は停電を引き起こしかねない。
 沖電が慎重な姿勢を崩さない理由がここにある。

 ■売電ビジネス

 太陽光発電は、国の再生可能エネルギー固定価格買い取り制度の導入によって急速に普及した。
 現状の買い取り制度は2種類あって、事業者は太陽光で発電した電力の余剰分を売るか、全量を売るかを選べる。
 余剰売電は太陽光で発電した電力をまずは家庭内で使用し、余った分を沖電に売るという副次的な制度。一方の全量売電は、発電した電力の全部を売る仕組みだ。
 全量売電は2012年7月にスタート。これを機に、システムを導入する事業者は加速度的に増えた。ある関係者はこう漏らす。「それまでの売電は余剰分を売って副収入を得るという意味合いが大きかったが、全量制度によって、これはもうビジネスになった」
 売電に伴うもうけの構造が、太陽光発電量の上昇に拍車を掛けた。

 ■制度の限界

 22日、沖電が事業者向けの説明会を開き、新規売買契約における条件として、発電した電力の出力を抑制することや蓄電池の設置を提案した。
 すかさず参加事業者が口を開く。「出力を抑制する期間の所得減はどうなるのか」。沖電の答えはゼロ。出力抑制期間中の買い取りを否定した。
 会場からはため息と失笑が漏れた。国の電力買い取り制度の限界を示すやり取りだった。
 この問題の原因はどこにあるのか。同じ問題は宮古島のほか、県内では久米島、本土では北海道でも浮上している。
 これらの現状に照らせば、受け入れ可能量の見通しの甘さが根底にあることは否めない。

 ■短期的解決の見通し

 今回の問題を受け、売電契約を保留されている事業者は計画の見直しを迫られている。
 国は、電力会社に受け入れ可能量の拡大を促すが、電力会社には電気の安定供給義務があるため安易な対応でリスクを負うことはできない。
 沖電が事業者に提案している出力抑制や蓄電池の設置も根本的な解決には至らないだろう。
 沖電が大型の蓄電池を導入するという検討も進められている。実現すれば一定程度受け入れ可能量の枠は広がるが、これは莫大な費用と時間がかかるため即効性はない。
 こうした実情を踏まえると短期的な解決策は見えてこない。島内で盛り上がってきた太陽光発電ブームは一気にしぼみかねない状況だ。
 再生可能エネルギー活用の先進地として注目される「エコの島」に、黄信号がともっている。

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