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行雲流水
2014年9月16日(火)8:55

「チェコの春」(行雲流水)

 テレビは世界各地の絶景や人々の暮らしを紹介してくれる。印象に残ることは、人々の明るさ、おおらかさであり、日々の生活を楽しんでいる姿である

▼NHKの「世界で一番美しい瞬間(とき)」は、その時期でなければ見ることのできない勝地を探す旅と、そこに暮らす人々の物語を紡いでいる。そのひとつ、チェコの5月、なだらかな起伏の大地が緑と菜の花の黄色に覆われて、一年で一番美しい季節があらわれる

▼人々は農作業の後、集まってコーラスを楽しみ、熟成させたワインを恋人に見立てて、称える歌をうたい乾杯する。小さな孫が祖父と一緒にぶどうの木の不要な芽を摘んでいる。そのゆったりしたほほ笑ましい姿に旅人は涙ぐんでいた。実りの秋、祭りでは、娘たちが民族衣装で着飾って踊る。母親はその準備に、刺しゅうなどを施して何カ月もかける

▼チェコといえば、スメタナ作曲の「モルダウ」(「わが祖国より」)にうたわれている川がとうとうと流れている国であり、ドボルザークは祖国を懐かしんで「家路」(交響曲「新世界より」)を作曲した

▼このような豊かな文化を持つ美しい国であるが、長い苦難の歴史があった。ナチス・ドイツに弾圧され、国土の一部をドイツに編入された時期があり、共産党政権下で、言論や集会の自由等を目指した、いわゆる「プラハの春」がソ連の戦車で制圧され、その後悲惨な状況が続いた

▼どこの国民も、もともとは善良で、平和で豊かな暮らしを求めている。しかし、いつの時代も、それを壊すのが悪しき政治である。

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