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行雲流水
2014年10月2日(木)8:55

「住民投票」(行雲流水)

 イギリスからの分離独立は是か非か。先月、スコットランドで「住民投票」が行われた。結果は独立反対派が過半数を占めたが、住民にとっては悩ましい選択だったようだ。投票当日、マイクを向けられた女性は「心は独立賛成、頭は反対。どちらにするか、投票所の中で決める」と話していた

▼イギリスは投票で決めたからいいものの、武力で決めようとする国の人々は悲惨だ。ユーゴスラビアは血みどろの戦闘の末、七つの国に分裂した。イラクやシリアでは最近、「イスラム国」建設をめざす新たな武装集団が現れた

▼東西冷戦の終焉(しゅうえん)でイデオロギーのたががはずれると、民族感情や宗教感情が噴出。先祖返りした観がある。自民族(自集団)を守り、他を攻撃する生き方は太古以来の人間の感情だ。この自己中心の感情は、個人や社会が成熟するにつれて薄れていく、というのが文化人類学者の見解だ

▼その意味で、スコットランドの女性の言葉は意味深長だ。また、チャーチルの「民主主義は最悪の政治体制だ。ただし過去の全ての制度を除いての話だがね」との言葉もある

▼間接民主主義の欠点を補う仕組みが「住民投票」であろう。しかし多くの国では、首長や議員など住民の代表者を決める選挙以外には、投票の機会がほとんどない。地域住民の発言権拡大のためには、住民投票の機会をふやす制度改革が必要かもしれない

▼しかしまた、住民投票の対象事項をむやみにふやせば、代議制民主主義の意味がなくなる。チャーチルの「皮肉」を反芻(はんすう)せざるを得ない。

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