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行雲流水
2015年3月17日(火)8:55

「自由からの逃走」(行雲流水)

 エーリッヒ・フロムは第2次大戦後の世界に大きな影響を与えた思想家として知られている。彼の代表作『自由からの逃走』は、ヒトラーの全体主義に世界が震撼(しんかん)している最中に書かれたもので、自由から逃避しようとする大衆心理がナチスなどの全体主義の温床だとして、自由の危機を訴え、現代文明における自由の意味を説いている

▼近代は自由を広げる歴史でもあった。個人は、宗教も生活のスタイルも自由に選べるようになった。しかし、ほんとうに自律する力を持たないままに絆から解き放された人間が襲われるのは、孤独と無力感である。特に社会が流動化するときには不安感を深め、自由を放棄して、国家等の権力に従属することで、安心を求めようとする

▼こういう心理的メカニズムが「自由からの逃走」であり、そういう性格類型をフロムは「権威主義的」と呼んだ。この権威的性格は、別に「サド・マゾヒスティックな性格」と呼ばれている。マゾ的面では権威の命令に従い、サド面では自分より弱く劣っている者を蔑視虐待することにマゾ的欲望を満足させる

▼ナチスの支配は、暴力だけでなく、宣伝や世論操作によって、大衆に権威的性格を広げて自発的協力を組織し、議会を通して政権をとった

▼フロムの指摘する、真の自由を損なう権威主義は、今日、国民の選挙行動や政治家の行動の中にも広くみられる

▼反ファシズム社会の実現のためには、個人の真の自発性と、それを可能にする社会的条件(民主化の徹底)の構築が強く求められる。

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