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行雲流水
2015年7月23日(木)9:01

【行雲流水】「ゼンマイラジオ」

 ゼンマイは、野山に生えているシダ植物の一種。その若葉は渦巻き状の形をしている。転じて、渦巻き状の金属製のバネをぜんまいという。帯状薄板を巻き締めて蓄えられた反発力は、有用な動力源であった

▼電池などを用いる以前の時計は、腕時計も柱時計もぜんまい式だった。おもちゃを動かすのも、ぜんまいだった

▼先日、那覇のまちでぜんまい式ラジオを見つけた。おもちゃ屋ではない。れっきとした家電量販店だ。小型で、LEDライト付き。ライトのスイッチを押すとライトが点く。もう1回押すと点滅に変わる。救難信号だ。ぜんまいを目いっぱい巻き締めた状態で、ライトなら3時間半、ラジオなら55分間機能するという

▼文明と遮断された社会-電気や電池のない地域では「すぐれもの」にちがいない。貴重な情報源だ。値段は2千円だという。台風時の停電に備えて購入することにした

▼購入理由はもう一つあった。以前、商工団体の青年部がボランティア活動で大臣表彰を受けたことがある。アフリカの奥地にぜんまいラジオ1千個を送ったことが表彰理由。ぜんまいラジオに頼らざるを得ない人々に同情した記憶がよみがえった

▼帰路、ひょっとしたらアフリカ奥地の人々は、ラジオや救難信号を必要としていないのでは、と思い直した。自然と共に生きているからだ。文明の発達が情報や保険の必要性を生むのかも。災難に遭う確率と損失の多寡を比較して、転ばぬ先の「杖」の予算を組む。安心感と負担感の調和点はどこか、難題ではある。

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