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行雲流水
2015年7月28日(火)9:01

【行雲流水】「幻の甲子園」

 甲子園の高校野球が始まって今年で百年目を迎えるが、戦争のために空白がある。しかし、中止が始まった翌年の1942年には大会が催されている。この大会は回数にカウントされない大会で、幻の大会と呼ばれている

▼先日、BS朝日放送で、この「幻の甲子園」をテーマに、ドキュメンタリー番組「幻の甲子園・戦争に埋もれた球児たちの夏」が放送された。「幻の甲子園野球」は、戦意高揚のため、文部省が朝日新聞社から開催権を奪って開催したもので、軍事色の強いものであった。スコアボードには「戦い抜こう大東亜戦」などの軍事スローガンが掲げられ、サイレンの代わりに進軍ラッパが鳴り響いた

▼ルールも特異なもので、デッドボールになりそうなときにも、打者は球をよけてはならなかった。試合中、選手交代は原則禁止された。そのため、準決勝戦が再試合になった試合の翌日、再試合と決勝戦がダブルヘッダーで行われたので、選手、特に投手は疲労困憊(こんぱい)、フォアボールが続出した。戦争に強い屈強な青年を育てようとする、非科学的、精神主義的な軍の意向に沿うものであった

▼過酷な条件の中でも、純粋に野球を愛して、全力を尽くして果敢に闘った選手たちも、その後出征、多くが戦死した

▼先に、NHKも「戦争と平和」シリーズで、このテーマを取り上げ、放送している

▼チームメートと共に全力で野球をすることの素晴らしさと、それを可能にする平和の尊さを訴えて、戦争の不条理を改めて考えさせる貴重な番組であった。

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