宮古毎日新聞(電子板)の試読はこちらから|宮古毎日新聞社

2015年10月9日(金) 9:01

【私見公論】情報通信技術による水難事故防止システムの提案/仲里雅彦

 遊泳中に溺れて死亡する痛ましい水難事故が相次いでいる。昨年は砂山ビーチの観光客4人を含め6人が亡くなっている。今年8月、渡口の浜で観光客家族4人が沖合に流され、父親・長男・祖父3人の水難死亡事故が発生。何とか防げる手だては無かったのか無念である。事故の共通点は、台風後のうねりの海でライフジャケットを着用せず遊泳、地元の人は海に入ることができない気象条件だったと話しており、注意を促す看板や救助用の浮き輪を設置する取り組みも事故を防ぐことはできなかった。


 県水難事故防止等に関する条例に基づき市内で開設の指定海水浴場は2カ所のみで、砂山ビーチや渡口の浜など多くのビーチは監視員や救命用具、緊急放送設備などの設置義務は無い。水難死亡事故を受け関係機関の対応は、注意喚起の看板設置やチラシ配布ならびにビーチパトロールを強化するとし、水難事故防止対策として実効性の高い積極的な対応策を示しておらず疑問が残る。


 報道によると、重大事故続発にビーチ監視員設置を求める声に市は「指定海水浴場ではないため考えていない」と答えている。一方、「市が駐車場やトイレなど観光客を呼び込む施設を設置しているなら、ビーチの管理は市がやるべきと認識してほしい」「今後も観光客は増える一方だが、毎年水難事故が起こればマイナスイメージになる。水難事故が起きない宮古をつくっていく必要がある」との指摘が出ている。


 海の安全管理に詳しい事業者は、多くの海水浴客が集まる砂山・前浜・吉野・新城の安全管理を徹底するだけでも意義はあると指摘し、「水難事故が起きたときの責任」を懸念するより「事故を起こさない環境整備」を進めることを訴えている。


 水難事故防止の有効手段としては、ビーチ監視員を置くことであるが、多くのビーチにライフセーバー有資格者を配置するための人材確保や莫大な人件費を誰が拠出するかについて、今もって議論すらできない状況にあり、早期導入は困難で現実的ではない。


 実現可能な方策として、現有通信インフラを有効活用し情報通信技術を導入した水難事故防止ビーチ監視システムを提案する。主要ビーチに「監視カメラ・赤色灯・文字情報装置・緊急放送設備」をセットとする端末機器を設置し、監視・告知・指示機能を持たせ、監視センターとは高速通信網で結び24時間監視するシステムであり、消防・警察等の関係機関とはネットワークで結びモニタリング可能である。


 センターには、各ビーチから送られる映像を大型モニター画面に写しだし監視する。モニター画面からの情報によりピンポイントで拡声器により注意放送したり、気象注意報等が発令された場合には赤色灯や文字情報装置により喚起し、海に入らないように誘導放送する。また、朝一番で海の状況を観察判断し、海水浴客への適切な情報提供ならびに放送事業者と連携し放送呼びかけが可能となる。このビーチ監視システムの伝送路は光ケーブルと携帯電波の併用で、IPで高画質の映像と音声および各種データのやりとりが可能で、初期投資はかかるが、後年度財政負担の少ないシステムである。


 市観光産業の純総生産額は180億円を超え、宮古経済活性化の強力な牽引車となっている。一方、世界最大の旅行口コミサイトで前浜ビーチが3年連続国内トップとなり、4位新城海岸、8位砂山ビーチが選出され、前浜ビーチはアジアでも15位に入り宮古のビーチ評価は極めて高い。


 観光産業をリーディング産業として位置づけるならば、宮古観光の柱である海を守り、事故を防止する具体的対策を講じることは、さらなる観光産業の発展による活性化ならびに安心安全な島づくりに大きく貢献するものであり喫緊の課題と考える。これまで繰り返されてきた水難事故に対する反省として官民連携による行動が必要と考える。民間事業者のノウハウを積極的に活用し、現状を改善することで少しでも水難事故防止に取り組むことこそが責務と考えるので関係機関のさらなるご尽力に期待したい。