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行雲流水
2015年10月13日(火)9:00

【行雲流水】「タカドーイ・デンゴ」

 10月8日からは寒露の節気。伊良部島にはすでにサシバが飛来している。例年、10月12日から18日ごろが渡りのピークだというから、この数日が観察を楽しむ絶好の日々になるのかもしれない

▼サシバは、本州各地で繁殖、愛知県伊良湖岬を経て鹿児島県佐多岬に集結、気象条件のよい日に飛び立ち、徳之島、宮古群島、八重山群島、フィリピンのバタン諸島をメーンに南下、フィリピンやインドシナの島々で越冬するという

▼サシバは精悍(せいかん)な姿と飛翔の美しさで人を魅了する。また、小さな身体で海山を越えて果敢に旅を続けるけなげさが感情移入を誘う。その昔、子供だった大人にとっては、サシバの大群といろいろな思い出が重なって、子供のころを懐かしく思い起こさせる。「鷹渡るわれ幼名で呼ばれたし」(平良雅景)

▼芭蕉は片雲の風に誘われて、漂泊の思いやまず旅にでたのだが、サシバを渡りの衝動にかき立てるのはなんだろうか。それは、DNAに刻まれた、何万年もの間に蓄積された生きる戦略の記憶であろう

▼サシバは高い象徴性を飛ぶ。一直線に滑空する姿は妥協を許さない意思の表象。緩やかな曲線は舞い、生きることの賛歌。明暗を反転させながら、らせん状に上昇する鷹柱、それは祈り

▼この島で羽を休めたサシバは、羽づくろいをして、星空に明日を夢見る。夜が明ける直前、仲間と呼びかけあって、南に向かって一直線に去っていく。行く手には風雨もあるが、希望のしるし虹もでる。(来年もまたやって来い)タカドーイ・デンゴ。

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