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【特集】新年号
2016年1月1日(金)9:18

新規と青年農業者が増加

上野地区で多く40人

 宮古の農業は新規就農者や青年農業者(18歳以上、45歳未満)が増えるなど明るい材料が出てきた。2014年の新規就農者は78人と2010年の35人と比べ2倍以上に増えた。青年農業者は304人で新規就農者の増加に伴い増える傾向にある。若い後継者が多いとみられている上野地区の青年農業者は40人。農家100戸当たりの数は約10人と農村部(城辺、下地、上野、伊良部、多良間)の中では最も割合が多かった。

■施設園芸に取り組む


地下ダムの水を利用した施設園芸を営む若者が増えた上野地区

地下ダムの水を利用した施設園芸を営む若者が増えた上野地区

 観光農園を営み農林水産大臣賞を受賞した上地登さん(58)=上野大嶺=によると、上野地区にはハウスにマンゴーやゴーヤー、トウガンなどを栽培し成功を収めている50~60代の農家が多い。彼らはウリミバエ根絶(1988年)と東京直行便の就航(89年)を機に、宮古の冬場の野菜を新鮮なうちに直行便で東京の市場に運び、高値で売り込むことを視野に施設園芸を始めた。93年には地下ダムの水利用も始まり、施設の規模拡大が進んだ。
 農業に夢を持ち日々努力を続けて経営規模を拡大し収益性も高い元気な農業を営む彼らの子供たちは幼いころから畑で遊び、父の背中を見て農業の職業としての魅力も肌で実感していた。地域農業の先駆者でもある上地さんらの子供たちは20~30代。彼らの多くは父と同じ農業を職業に選択している。県野菜品評会のゴーヤー部門で金賞を受賞した伊志嶺一之さん(59)の長男薫さん(33)も父と同じゴーヤーを栽培している。親子の経営は完全に分離した。「昔のように親が農業収入を一手に握るやり方では、今の若者はついてこない」と話し、昔流の経営イメージが後継者育成を阻害する一つの要因になっていることを指摘した。上地さんの長男も4月から就農する。
 上野地区の畑は百パーセント近く区画整理され、地下ダムの水もほぼ全域の畑で使えるようになった。かんがい用水がなかったころ施設園芸農家はトラックに水タンクを積んで給水所とハウスをピストン往復。労働の半分はかん水に費やしていた。現在はコックをひねるだけで、広大なハウスに水が行きわたるようになった。上野では住民の悲願である水利用農業が実現し、「水無し農業」「雨乞い農業」の重苦から脱却した。同地区では水の普及が若い農家を育てる大きな力となったといわれている。

■葉タバコ農家に後継者育つ

 品目別には葉タバコ農家のほとんどに後継者が育っている。ある若い後継者は後継ぎが育つ理由に①植え付けから収穫まで一連の作業が機械化され仕事が比較的楽になった②経営規模が大きく所得が安定している-などを挙げた。「作物は努力に報いてくれる。良い作柄の葉タバコを生産した時の喜びは最高」と葉タバコ作りの魅力を話した。今年は10㌃当たり収量226㌔を目標に頑張っている。
 過疎化と高齢化が進んでいるある集落の区長さんに、農家の年齢の状況を聞いた。約100戸の農家のうち青年農業者がいるのは2~3戸。70~80代の高齢者が3分の2を占めている。若いころ島を出て行った子供たちは、その多くが帰っていない。区長は「子供たちは島(実家)に帰りたいと思っている。しかし旧態依然の農業では帰っても生活ができないと考えて、思いに任せないでいる」と過疎・高齢化の背景を分析した。今後に向けては地域の特性を生かした新しい農業の開発と優秀な農業指導者の育成を提案した。
 2010年現在の地区別農家数は平良1091戸、城辺1273戸、下地520戸、上野415戸、伊良部845戸、多良間275戸となっている。農家100戸当たりの青年農業者数は多い順に平良10・5人(青年農業者総数115人)、上野9・6人(同40人)、多良間9・4人(同26人)、下地6・1人(同32人)、城辺5・2人(同67人)、伊良部2・8人(同24人)となっている。都市部の平良は10・5人と多いが、地方の畑を耕作する人もおり、所在地(平良)で農業を営む青年の実態とは違うと推測されている。

■新規就農者に支援金

 農家の高齢化や就農人口減少問題は全国だけでなく宮古でも深刻化し、地域農業維持には新規就農者の確保が課題になっている。行政は同問題に対処するため新規就農者支援に年間150万円(上限)を給付するなど予算措置を強化した。
宮古地区の14年の新規就農者は78人と前年の66人から12人増えた。年齢層別の内訳は青年(18歳以上65歳未満が41人、中後年が37人。営農類型はサトウキビが最も多く50人、野菜19人、肉用牛3人の順だった。県宮古農林水産振興センターの農業改良普及課は、増加傾向は支援制度も一つの要因になっているとみている。
 畑の所在地別の新規就農者は城辺10人、平良9人、伊良部9人、上野8人、下地5人となっている。
 青年就農給付金(準備型)は農業技術や経営ノウハウの習得のための先進農家などで研修する人に交付する。対象年齢は45歳未満。1~2年間、年間に150万円が上限。農業改良普及課が取りまとめたものを県農業振興公社が受け付けている。
 青年就農給付金は(経営開始型)は新規就農者の経営が軌道に乗るまでの間を支援する。就農時年齢は45歳未満。150万円を上限に期間は最長5年間。各市町村が認定している。
 就農相談は普及課や市町村、JAで受け付けている。内容は農地確保から設備取得、師匠の確保、就農者の資質向上までと各分野で内容も充実させた。

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