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行雲流水
2016年8月11日(木)9:01

【行雲流水】「色即是空」

 先日、英語で説教している坊さんをテレビでみた。20人ほどの聴衆は皆西洋人。珍しいので、字幕つきの講話に聞き入ってしまった

▼ベトナム生まれの禅僧で、ベトナム戦争当時は村の孤児たちに教育を施していたという。旧政府軍の攻撃で校舎は炎上し、戦後は新政府からも迫害されたので米国へ亡命したとのこと

▼体験をとおして説く仏教の思想は、説得力があった。ハスの茎の真ん中をつまんで横持ちにして「私から見て右は、皆さんから見たら左だ」。「右をなくそう」と言って右半分を切り捨て、左半分の真ん中を持ち「新しい右半分が現れる」と示す

▼見入っていると「本来は右もなければ左もない、長いも短いも、汚いもきれいもない」。心に生じる基準で判断しているだけだから、心の持ち方次第では、他人もなければ自分もないと説く。ユネスコ憲章前文にある「戦争は人の心の中で生まれる」と相通じるものがある

▼「物や心の本質は『空』(くう)だ。だから、他人と自分は同一だ」。このあたりは、わかりにくい。だが、「憎しみや怒りが生じたときは、それが静まるまでこのことを考えた」「校舎を焼かれたときは、心が静まるまで1カ月かかった」との話はわかるような気がした。憎しみや怒りや差別の連鎖には思いあたるふしがある

▼テレビを見終わって、「正義感」を考えた。「正しい」も「正しくない」もない、といえるのかどうか。戦争は、敵味方とも「正義」の旗の下で行われる。憎悪や怒りの感情が火の元かもしれない。まもなく、終戦記念日だ。

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