2016年11月17日(木) 9:01

【行雲流水】(バランス感覚)

 先日の小欄で「経済をないがしろにしてはならない」と書いたところ、友人から「人はパンのみで生きるにあらず」と指摘された。生きる力は、生活の安定と心の安らぎを求める向上心から生まれる。植物が水と光を求めて根を張り茎を伸ばすことと同じである、と


▼聖書の教えでは、水がパンで、光は信仰心。唯一絶対の神を信じることが生きる力を与えると説く。他方、日本では万物に神々が宿ると信じられていた。自然界への畏怖という信仰心だったといえなくもない。仏教の世界にも帰依すべき如来や菩薩が大勢いる


▼伝統的な国教は西欧ではキリスト教、中国は儒教、日本は仏教(ただし、江戸期の官学は儒教)だった。ものの見方にそれぞれ違いはあるが、いずれも説いているのは「人の道」。たとえば儒教の特徴の一つである「礼節」は、父子、君臣、夫婦、長幼、朋友間の秩序を保つ要であると説かれている


▼もっとも、江戸期の儒教は朱子学派(12世紀)の解釈によったという。「こうあるべきだ」との大義名分を強調するクセがあったようだ


▼「衣食足りて礼節を知る」(管子)との言葉もある。形而上の思考や行動には生活の安定が必要だと言っている。朱子学派を〝論語読みの論語知らず〟とやゆした由縁であろうか


▼他人を思いやる心情も、家族を養うために一生懸命働く姿も、ともに美しい。冒頭の二つの命題は、心のはたらき(理想)と生活の営み(現実)を担ぐ天秤棒の両端から、「バランス感覚を失うことなかれ」と言っているにすぎないのでは。

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    平成29年12月1日現在

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