2016年12月20日(火) 9:01

【行雲流水】(『星の王子さま』の世界)

 世界中の子どもたちに、また真実を求める大人たちのために書かれたサン・テグジュペリの『星の王子さま』は世界中で愛読されている


▼語り手・飛行士が飛行機事故でサハラ砂漠に不時着し、そこで小さな星からやってきた不思議な少年「星の王子さま」に出会う。王子は、自分が世話をしてきた「バラの花」と心を通わせる事ができず、星めぐりの旅に出る


▼そこで出会った王様は、無力なのに権力を演出する。「うぬぼれ男」は目立つ事のみに執着する。「呑み助」は、酒を飲む恥ずかしさを忘れるために酒を飲んでいる。実業家は所有する物の数にしか関心がない


▼大人たちに絶望した王子は地球に来て、キツネと飛行士と親しくなる。キツネは言う「大事なことは心で見ないと見えないよ」、「砂漠が美しいのはどこかに井戸を隠しているからだ」。王子は、残してきた「バラの花」の真の姿が分かるようになる。「バラの花」故に、僕の星は美しいんだ


▼この作品は子どもたちへのメルヘンを感じさせるが、著者の国フランスがナチスに占領されていた時代背景と、隠喩等の詩的表現の故に、多様な読まれかたをしている。たとえば、星めぐりで会った変な大人たちにはナチスやファシズムを止め得なかった批判が込められている


▼最後に、王子は体を毒蛇に噛ませて、魂になって星に返り、『星の王子さま』が出版された翌年1944年、サン・テグジュペリはナチス占領下の祖国フランスへ偵察写真撮影に飛び立ったが、今なお未帰還のままである。

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