2017年1月21日(土) 9:01

【行雲流水】(リュウキュウコスミレ)

 1月18日の本紙に「リュウキュウコスミレ開花」の写真が掲載された。去年より15日も開花が遅れた、とのこと。わが家の庭のスミレは去年の暮には花をつけていたのを思い起こした。今では、広くもない庭の芝の中からその存在を競い合っている


▼芝生とのせめぎあいをしのいで花をつけたにしても、土の上で花開いたものには見劣りするが、そのしたたかさは尋常ではない。スミレの尋常ではないしたたかさを雑草生態学の稲垣栄洋(いながきひでひろ)氏の『身近な雑草の愉快な生きかた』(ちくま文庫)で教えてもらった


▼著書ではスミレの副題として「野に咲く花のシティライフ」とあって北海道から九州にかけて分布し3月から5月にかけて濃い紫の花をつけるスミレについての話だと思われるが、リュウキュウコスミレとの違いは開花の時期と花の色そして大きさや草丈がいくらか違うだけで花の形や実、そのほかの特徴に変わりはない


▼本来、野の花であるスミレが街中のコンクリートの小さな割れ目に根付いて花開く、そのことを指してシティライフと表現している。苛酷な環境であってもその種子は生きる仕組みを自らの中に持っている、それが副題の意味するところだろう


▼生きる仕組みだけではない子孫を残すことについてもしたたかだ。わが家のスミレが夏から冬にかけて花を咲かせた気配もないのに種だけはしっかりつけていた。花を開くこともなく実をむすぶ「閉鎖花(へいさか)」であった


▼稲垣氏は、文章の仕舞に松尾芭蕉の「なにやらゆかし菫草」を引き合いにして、スミレのしたたかさを知れば「ゆかし」と言えたかどうか、と問いかける。

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