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行雲流水
2017年6月1日(木)9:01

【行雲】(オキシトシン)

 だれも戦争を望まないのに、なぜ戦争が起こるのか。脳内物質オキシトシンとの関連が注目されているようだ。オキシトシンの別名は〝幸せのホルモン〟。「大災害の後には戦争が起こる」との〝仮説〟を検証した脳科学者中野信子氏によれば、この〝仮説〟はオキシトシンの作用に依拠しているという

▼大災害が起こると同情心や救援活動が広まり、安心感・身内意識・一体感が生まれる。するとオキシトシンが分泌され、幸せ感が高まる。その結果、自分と違う意見を排除し、敵をつくりたがる心理が生まれる。しかも、その敵意は隣人に向かいがちだという

▼脳内物質の分泌メカニズムと心理作用の関係は興味深い。同氏はまた、「満場一致の議決や意見は危うい」との指摘もオキシトシンと関係があると話す

▼たしかに、昭和年の大政翼賛会運動は挙国一致の一体感を創り出すための運動であった。世界貿易センタービルの惨状をみた米国は、イラク戦争を起こしている。そのときの国内世論は、日本でも米国でも「イケイケどんどん」だった

▼一体感がもたらす幸せ感を維持するために異分子を排除したくなる心理は理解できる。問題は、それを敵意丸出しの言葉や行動に移すことにありそうだ。率直に感情を表に出す幼児が自制心を獲得していく発達段階の問題と似ているように思える

▼平和を求める心が戦争を起こすかもしれない-このコインの裏表のような心理を克服するためには、オキシトシンに関する知見を頭の片隅においておく必要があるのかもしれない。

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