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行雲流水
2017年6月6日(火)9:01

【行雲流水】(いのちの輝き)

 『癒やしとなった~シール貼り絵―垣花恵蔵作品集』がヒロ夫人と画家で娘の恵子さんによって出版された。恵蔵さんが人生最期に出会ったよろこびである「シール貼り絵」の作品をまとめたものである


▼恵蔵さんは高校の英語教師を定年まで勤めた。晩年はがん治療のため入院、骨折も加わって次第に衰弱していった。最期は、自宅で訪問看護を受けながら療養したが、2015年3月に亡くなった

▼モルヒネを次第に増量していく状況の中で、恵蔵さんに恵子が「私が下絵を描くから、絵の具のかわりにシールを貼って、絵を描いてみたら」とすすめる。こうして始まったシール貼り絵に恵蔵さんは、昼も夜も寝食を忘れて没頭、亡くなるまでの1年5カ月の間に285点の作品を残した

▼恵子は、家族の日常の生活や、思い出に残ること、父親の心情等に想いを馳せて下絵を描いている。「ズワイガニを食べたいな。一緒に北海道旅行で食べたとき、おいしかったね」。ズワイガニの1枚の絵には、楽しかった思い出や、愛する妻や娘といることの喜びが込められている。妻・ヒロの誕生日に向けたプレゼントとして、ヒロの似顔絵やドレス、靴やバッグ、(女王さまの)冠やお城が描かれている

▼この世にあるものすべてがきらめいて見えていたのだろうか。作品は多彩で、驚くほどに美しい。一般の人にとっても、幼児から高齢者までが希望を感じ、楽しめる作品集である

▼愛情に包まれて、熱中できるものを持てたことは幸せであった。すてきな作品の数々は、その証しである。

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