2017年8月11日(金) 9:01

【私見公論】方言と地方創生/大城 裕子

~文化協会の活動から②~


 今年の宮古島はサトウキビや葉タバコ、マンゴー、野菜類ともに好調のようだ。自然の恵みを存分に受けて育った農作物を順調に出荷できることは、農家にとってこの上ない喜びだろう。一方、台風の接近が少ない近年、海水の撹拌が起こらず、海水温が高い状態が続いてサンゴの白化をさらに招いている。地球は、この社会は、さまざまなことが表裏一体だ。


 言葉の世界も然り。明治時代に入り、国力をつけるために教育が重要視され、義務教育が始まり、言葉を統一する目的で「標準語」が誕生した。その後、過度の標準語励行運動とラジオやテレビから流れる標準語の波に呑まれて地域ごとに違う個性豊かな方言が少しずつ消えていき、地域によっては今や消滅の危機に瀕している。国民の学力が向上する一方で、地域の人々の生活とそこで育まれてきた文化を支えてきた方言が失われてきたのである。


 県は2013(平成25)年度、10年間の「しまくとぅば普及推進計画」を策定した。「沖縄文化の基層であるしまくとぅばが消滅すると県民の郷土愛も失われ、沖縄文化の衰退へとつながる」と指摘し、前期(3年)は気運醸成、中期(3年)は普及促進、後期(4年)を定着の時期としている。今年度は普及促進期の2年目となる。


 宮古では、24年前に本協会の前身である平良市文化協会主催で「方言弁論大会」が始まった。方言消滅を危惧してのことである。5年後に「鳴りとぅゆんみゃ~く方言大会」と名称を改め、地域に育てていただきながら継続開催し、方言継承活動の一助となれるよう取り組んでいる。また、今年度7回目となる、宮古地区中学校文化連盟主催の「方言お話パフォーマンス大会」も児童・生徒へのアプローチとして全県の手本となるような催しである。去る7月1日に開催した第24回方言大会で文化協会長賞(優良賞)を受賞した宮古高校2年生の砂川姫奈多さんも中学生の時、この大会で方言による狂言に出演し、みゃーくふつに興味を持ったという。さらに、マティダ市民劇場が主管する「劇団ぴん座」の公演も好評を博している。方言による笑いあり涙ありの人情劇は、方言を聞いて育った世代の心の襞に入り込み、方言の魅力と継承の必要性を再認識させてくれている。人々に活力を与えてくれる「笑い」から、継承へと繋げていく重要な役割を担っていると言えよう。


 最近、「シビックプライド(civicpride)」ということばをよく耳にする。1990年代後半のイギリスで、19世紀の都市の研究が進んだことにより、注目されるようになったと言われるシビック(市民の、都市の)プライド。住民一人ひとりが都市(市区町村、商店街等)に抱く誇りや愛着のことである。自分の住むまちや地域づくりに関わろうとする当事者意識に基づく自負心のことでもある。このシビックプライドが高まり、「このまちをもっとよくしていこう」という住民が増えることで、地方創生への推進力が高まると期待されている。ここ数年、地域を見つめなおし、愛着をもってもらうきっかけとして、「方言」に注目している都市が少なくない。言葉の力で地域おこしの機運が醸成されていけば、多方面への波及効果が期待できる。宮古にはすでに十分なベースがある。国内外の事例を参考にしながら、独自性を加え、積極的な情報発信を行っていけば地域力がさらに高まるだろう。


 また、方言への興味、関心は言語全般への興味、関心へと繋がっていくように感じる。一人ひとりが宮古の文化の根っこ、方言に親しみながら、これから加速するインバウンド事業にも参画できるよう外国語も身につけ、バイリンガルならぬマルチリンガルを目指してみるのはどうだろう。多言語(方言も地域によって違うのだから)を習得することによって見えてくる色鮮やかな世界を通して自分たちの島の未来を描き、一人ひとりが活力のある宮古を創る担い手となる。そうすれば、自立的・内発的に地方創生を進めることは十分に可能であろう。


 「今さら方言?」「今だから方言」
(宮古島市文化協会会長)

  • 宮古島の人口

    平成30年11月1日現在

    宮古島市 54,209 人
    27,144 人
    27,065 人
    世帯数 26,779 軒
    多良間村 1,173 人
    629 人
    544 人
    世帯数 521 軒
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