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行雲流水
2017年11月28日(火)8:54

【行雲流水】(沖縄への短い帰還)

 池澤夏樹は小説家、詩人、翻訳、書評も手掛ける日本芸術院会員で、芥川賞選考委員を15年間務めた。発表した作品は『スティル・ライフ』の芥川賞受賞をはじめ、数々の賞を受賞している

▼池澤は沖縄に移住した後、海外に渡り、久しぶりに帰ってきた。昨年『沖縄への短い帰還』を出版したが、その中で、沖縄について書いている。「一つ一つが面白い。歌に感動し、食べ物を喜び、言葉の豊かさにそそられ、風景を楽しみ、人々の心遣いの優しさに驚く」

▼池澤は、平成6年から沖縄に移住した。那覇で5年、後半の5年は知念村で住んだ。村では、地域の班長として、13戸をたばねて、村役場からの文書を配ったり、赤十字募金を徴収するなど、普通の村民として過ごした。文壇での華々しい活躍と、村での集金などの地味な活動との落差が面白い

▼しかし、不条理なことは彼の知性が許さない。村が米軍の四軍調整官を講師に講演会を計画したときには、「意図的なものならば卑劣、意図せざるものならば非常識」と糾弾、講演会の撤回を要求した

▼東京では見えないものが沖縄では分かるという。「日本の政治のインチキなところがはっきりわかる。こんなことをやっていたのか、そこまでやるのかと、思う」

▼沖縄については、「ヤマトに同化するのではなく、ウチナーのままで受け入れなければならない。沖縄的なものの考え方、ふるまい、生き方が加わって日本が豊かになる」。それは、沖縄自体の希望であり、創造的発展の目標でもある。

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