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行雲流水
2017年12月14日(木)8:54

【行雲】(メンテナンス)

 昭和30年代、米国の駐日大使ライシャワー氏が暴漢に襲われる事件があった。大使が入院した公立病院には、米国からも知人友人が見舞いにやってきた

▼間もなく、大使はハワイの病院へ移った。米国人の対日評価が下がることを心配したためだという。配管はむきだしでゴミを被ったままの公立病院を見た米国人は、日本に対し偏見を持つにちがいないと思ったとのこと

▼日本の役所は、メンテナンスを軽視する傾向があった。道路、建物、公衆便所などは造りっぱなし。営繕、清掃などの維持管理費は必要不可欠な経費のはずだが、予算の優先順位は低かった

▼今、トンネルや橋の改修が全国規模で行われている。過去にメンテナンスを怠ったツケの総決算だ。沖縄でも、塩害による腐食がひどい、台風被害の修復は不十分、道路沿線の草は伸び放題など、維持管理費の不足が露呈している

▼新しい施設をつくる場合には、建設費だけでなく、将来の維持管理費についても見積もっておく必要があるのでは。たとえボランティア活動で維持する場合であっても、あらかじめ負担計画を示して合意形成を図っておくことが肝要だ

▼施設の機能を維持するためだけではない。市民の美意識の涵養にも役立つはずだ。「美は細部に宿る」という。建物のたたずまい、人の立ち居振る舞い、包装紙の折り目など、何気なく目にする風景や所作についても言えそうだ。予算の編成や審議に際しては、新施設の建設費だけでなく、既存施設を含めた維持管理費にも目配りをしてほしいものだ。

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