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行雲流水
2017年12月26日(火)8:54

【行雲流水】(歓喜に寄す)

 ロマン・ロランは、フランスの作家。理想主義的なヒューマニズム、平和主義、反ファシズムを掲げ、戦争反対を叫び続けた。それ故に迫害も受けた。そんな彼はベートーベンの音楽を心の拠り所とした。そして、その感謝の歌として、『ベートーベンの生涯』を書いた

▼彼は書いている。「私が英雄と呼ぶのは心によって偉大であった人々だけである。偉大さのない物質主義が人々の考えにのしかかっている。世界が、分別臭くて、さもしい利己主義に浸って窒息している。もう一度窓を開けよう。広い大気を流れ込ませよう。英雄たちの息吹を吸おうではないか」

▼『第九交響曲』の、あの心を酔わせる終曲こそは、打ちのめされたわたしを、勝ち誇った光明に向かって立ち上がらせた。魂の解放以外の何物でもない

▼終楽章はドイツの詩人シラーの「歓喜に寄す」で歌われる。「おお、友よ、このような調べではなく、もっと快い、歓喜に満ちた歌を歌おうではないか」。(この部分だけはベートーベン自身の作詞である)。「汝の神秘な力は、引き裂かれたものを再び結びつけ、汝の優しい翼の憩うところ、人々はみな兄弟となる」

▼世界は今、苦しんでいる。宗教間の対立と紛争。内戦と難民の悲惨。大国の覇権主義。軍拡競争。格差の拡大と、未来を担う子どもの貧困。欲望の肥大化と経済至上主義の横行。など

▼そんな中、「サントリー1万人の第九」をはじめ各地で「第九交響曲」が演奏されている。人々は、「苦悩をつき抜けて歓喜に至る」ことを切望するからである。

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