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美ぎスマ
2018年5月26日(土)8:53

【美ぎスマ】伝統の畜産継ぐ大きな子牛を生産/平良地区・宮原集落

 和牛生産農家・喜屋武隆さん(53)の朝は早い。6時半までには牛舎に行き牛に餌を与える。母幸子さんが一緒の時もある。妻絢子さんは子牛の哺乳を担当する。母牛の頭数は約30頭、子牛が約25頭。「食欲はいいか。体調は良好か」。家族3人が力を合わせ、牛一頭一頭に目を配り愛情を込めて育てている。

 父勇さん(故人)は優秀な和牛生産に情熱を傾ける畜産農家として知られていた人。2000年度の第回県畜産共進会では出品した2頭が優秀賞を受賞し、平良市の団体賞初受賞に貢献した。

 そんな畜産一筋の父に頼まれ、隆さんが家業を引き継いだのは38歳の時だった。農家に生まれた隆さんは幼いころから牛になじんでいたこともあり、後継ぎに抵抗感はなかった。 

 牧草の刈り取りや給餌、体調管理など主な仕事は隆さんが担当。父は削蹄に駆け回り、余裕があれば共進会出品牛の世話をしていたという。

 新たな船出をしたが、その先は波乱続きだった。当初の経営は牛肉の輸入自由化とバブル崩壊のダブルパンチを受けて価格が暴落し採算が悪化。3頭を60万円で売って、「あーあ」とため息をついたこともあった。

 改善策としてはコスト削減を徹底した。濃厚飼料の給餌を適正量に絞り込んだら飼料代を半分に減らせたという。サトウキビ代金の支えもありピンチを乗り越えることができた。国内でBSEや口蹄(こうてい)疫が発生した時の価格暴落も経験した。

 飼育管理の面では、子牛の発育をどうすれば粒ぞろいにできるのか、ずっと考えてきた。試行錯誤の結果、次の三つの段階を見つけた。①いい土にいい草を作る②この草をたくさん与えていい繁殖牛(土台)を育てる③この繁殖牛にいい草をたくさん与えれば大きくて強い子牛が産まれる。若者たちには「何事も土台づくりが大事」と話すという。

 子牛は生後1週間くらいで、母牛から離し子牛育成牛舎で育てる。出荷月齢は9カ月前後。ほとんどが標準体重の270㌔(1日1㌔増体)を上回るようになった。

 系統の改良は雌牛側からも進め、全国的に有名な銘柄牛の導入を始めた。5年前に糸満市の南部家畜市場で買った雌子牛の孫は4月の競りで94万円で売れた。最近は宮崎県から妊娠牛を175万円で導入した。「価格が低迷しても子牛が60万円程度で売れる系統を何頭か確保しておくのが経営安定には必要」と話した。

 隆さんは2008年に市の農業委員に当選し、今年は10年目になる。宮古島市の農業については、かんがい施設や畑の面整備など基盤整備が進んでいる点を評価。一方で、後継者不足を課題に挙げた。畜産関係の対策では高齢者の経営を若者に譲渡している本土の事例を紹介した。

 「ゆたかな畜産の里宮原」では久志恵三さんが農林水産大臣賞受賞の実績を残している。下地春綱さんと平良一夫さんは宮古和牛改良組合長を務め、畜産発展に尽くした。

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