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行雲流水
2018年6月12日(火)8:54

【行雲流水】(ポアンカレ)

 ある読書週間の座談会で、参加者が、それぞれに推薦する図書を紹介した。僕は、アンリ・ポアンカレの『科学の方法』を紹介した。著者がいかに偉大な学者かも知らずに

▼ちなみに、座談会参加者は、岡本恵昌、山内朝秀、宮国泰誠、与座勇吉、皆川 元、サムエル・北村、仲地清成、宮国泰良(主催・週刊宮古)、大宜見猛(司会)で、1962年、山内宅で行われた。当時の文化状況を示す一こまではある

▼さて、夏目漱石は、「偶然とは原因が複雑すぎて、見当がつかない時に言うのだ」とポアンカレの論に即して、作中人物に語らせている

▼ところで、原因が分かると結果は予測できるだろうか。ポアンカレも関わった「カオス(混沌)理論」はそれを否定する。「最初の状態がほんの少し違うだけで将来大きな違いを生む」ので、将来の予測はできないというものである。同じ原因では同じ結果が出る。似た原因では似た結果が出るという従来の世界観を覆した理論である

▼1904年、ポアンカレが提唱した「ポアンカレの予想」の証明は1億円の懸賞もかかった難問で、100年間未解決であった。それが2006年ロシアのペレルマンによって証明された。その証明によって、宇宙の取りうる形が明らかになった

▼ペレルマンはこの功績により、数学界のノーベル賞ともいわれるフィールズ賞に決まったが、その受賞を拒否、数学の表舞台から消え、母親と静かに暮らしているという。名誉も金も、学術の達成感に比べれば、取るに足らないことなのかもしれない。(空)

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