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視点・焦点
2018年7月28日(土)8:54

【視点・焦点】知事、撤回決断の行方は/竹中 明洋

 ついに翁長雄志知事が踏み切った。仲井眞弘多前知事による辺野古の埋め立て承認の撤回に向け、手続きを開始すると表明したのだ。

 翁長知事が昨日の会見で指摘したところでは、辺野古での移設工事で沖縄防衛局は環境保全対策などを県に示さずに着工しており、事業者の義務に違反しているという。

 さらに、新たに判明した事実として、護岸が設置される場所の地盤が軟弱であること、国立沖縄高専の校舎などが高さ制限に抵触することなどを挙げた。

 先に謝花喜一郎副知事が市民団体の代表らに明らかにしたスケジュールでは、7月中に国からの反論を聞く「聴聞」の通知を行い、8月17日にも予定される土砂搬入を前に承認の撤回を目指すことになる。

 撤回で工事は止まるが、国がすぐさま撤回の執行停止を裁判所に申し立てるとともに、撤回の取り消しを求める裁判などを起こすのは必至だ。

 3年前に、翁長知事が行った埋め立て承認の取り消し後の裁判のことは記憶に新しい。裁判所は県の言い分をほとんど汲み取ることなく、前知事による承認手続きに瑕疵はなかったとした。

 今回も、国は入念な準備をして待ち構えているはずだ。取材した防衛省幹部は自信満々で、知事が指摘した承認後に判明した新たな事実についても十分に反論できるといい、工事停止期間は1カ月もかからないのではないかと話していた。

 率直に言って、県にはかなり厳しい裁判になることが予想される。それは、誰よりも翁長知事本人がよく分かっているはずだ。国は、撤回によって工事が止まることへの損害賠償すらちらつかせている。それでも知事が撤回に踏み切ったのはなぜか。

 やはり、11月に控えた県知事選挙が大きいのではないか。再選を目指すのか態度を明らかにしていないが、昨日のコメントには、「今後もあらゆる手段を駆使して、辺野古に新基地はつくらせないという公約の実現に向け、全力で取り組む」とあった。まだまだ意欲ありと読み取れる。

 ただ、全国知事会への出席を見送るほどだから、体調は決して良くないのだろう。会見では、外反母趾で痛めて歩くのがきついと話していた。

 選挙を前に影響力を維持するためにも、撤回に踏み切らないわけにはいかないとしても、このカードを切れば、後がないのも事実だ。翁長知事にとって、苦渋の決断だったのではないか。

 一方、県内最大都市のの那覇では、今月の22日と24日、市長選挙の候補者2人が相次いで会見を開き出馬表明をした。会見の日付順で、自民党県議の翁長政俊氏と現職市長の城間幹子氏だ。対照的な政策を掲げていて分かりやすい。

 翁長氏は、自民党ベテラン県議らしく、政府とのパイプをもとに、那覇空港や那覇軍港周辺を再開発して新たな産業や物流の拠点を整備するとともに、子育て支援などにも目配りするという。

 かたや、城間氏は4年間の実績として、待機児童の解消や市独自の大学進学者への給付型奨学金制度の創設など、きめ細やかな支援の網をつくってきたことを挙げ、貧困問題の改善などを今後の重要施策に掲げた。

 辺野古移設をめぐっても、翁長県議が「争点にならないのではないか」「(那覇市は)当事者ではないので、コメントする立場にない」としたのに対し、城間氏は「沖縄県にこれ以上、新しい基地はいらない」とする。

 県都での選挙だけに、直後の知事選にも大きく影響を与える。那覇の情勢にも注目だ。

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