2018年8月30日(木) 8:54

【美ぎスマ】吉野創立90周年/城辺地区・吉野集落

 吉野は250年ほど前に発祥したとされる古い集落。以前は保良に属していたが1928(昭和3)年、分区創立し今年で90年になった。90年の間には戦争や戦後の混乱期、大干ばつ、サラ、コラ、デラ、マエミーなどの猛烈な台風やバブル経済の崩壊等多くの困難を体験。1995(平成7)年には金を出し合って集落の活力を生み出す新公民館を造った。住民たちは困難を乗り越え力を合わせ切磋琢磨(せっさたくま)を重ね発展。住宅はかやぶきからコンクリート、豆ランプは蛍光灯に変わり、各家庭の生活は自動車やテレビ、冷蔵庫、洗濯機を備えるなど豊かになった。産業はサトウキビと肉用牛生産が中心。近年はゴルフ場やリゾートホテルも進出し、地元農産物の活用や雇用促進が期待されている。7月末の人口は147人(男77人、女70人)、世帯数は89戸。


高江洲さん今昔語る/課題は若者の定住


吉野公民館と住宅の風景。茅葺だった住宅は長年の間に台風に耐えるコンクリート造りに変わった

吉野公民館と住宅の風景。茅葺だった住宅は長年の間に台風に耐えるコンクリート造りに変わった

 吉野の昔の呼び名は「割目(ば●(●=すに○)み)」。保良の区域だったが1928(昭和3)年に「割目」の集落名で分区した。約1㌔も離れた保良公民館との往来に長い凸凹の泥道を通る不便さなどがあったからだった。


 小集落「割目」の発祥は古く250年ほど前に平良荷川取の住民が移住し原野を開拓して農業をしたのが始まりとされる。鍛冶屋を営む者もいた。根間栄吉さ

吉野の歴史を語ってくれた高江洲盛栄さん

吉野の歴史を語ってくれた高江洲盛栄さん

ん(故人)の西隣が「村建て元祖の地」で、今でも屋敷の石垣跡が残る。


 時代が進み「割目」の名称は時代にふさわしくないと若者たちから指摘があり1958(昭和33)年、「吉野」に改称した。


 改称に関しては保良に住む女性の予言者が「集落南端の四辻の所まで宅地が広がったころに改称したら割目にはブス(優れ者)が生まれる」と予言。吉野の長老高江洲盛栄さん(97)は「予言の通り吉野には仲座栄三博士ら多くのブスが生まれたよ」と笑顔で話した。


 高江洲さんは1921(大正10)年に生まれた。当時の主食はイモ。換金作物としてサトウキビを栽培していた。畑を耕す鋤の動力には馬や牛を使った。平良の街にも馬に乗って行った。高江洲さんは「お菓子を買ってもらうために父の乗る馬のしっぽをつかんでついて行った」と話した。馬は耕運機の普及に伴い、いなくなった。


 1944年戦雲は急を告げ、吉野にも騎兵隊が駐屯した。イモや野菜は軍に徴発され食糧の確保は深刻になった。戦争が終わった45(昭和20)年は8カ月以上も雨が降らず飢饉(ききん)に襲われた。


 歳の男性は「毒抜きを間違えたら死ぬこともある危険なソテツさえ食べた。この年は所有する山からソテツが盗まれるほど食糧事情はひっ迫していた。味は?美味。しかしソテツを食べて死んだ人もいた」と注意を促した。赤い丸い実の中身もおいしかったという。


 イモや麦、大豆などを作り自家消費する自給自足的だった経済は1950(昭和25)年ごろから、換金作物のサトウキビへと作物を転換する貨幣経済へと発展していった。吉野の農家は土づくりなどに日々努力を重ね1973(昭和48)年には旧城辺町の産業共進会で総合優勝に輝いた。


 吉野の住民は団結力の強さを見せつける足跡を歴史の一ページに刻んだ。1977(昭和52)年5月30日、住民85人はバラ海(吉野の海浜)に降りて「砂の不法採取を許すな」と叫んだ。この抗議行動は他地域の住民をも巻き込んで広く盛り上がり、砂の採取を阻止し美しい自然を守り抜くことにつながった。吉野ビーチは現在、多くの海水浴客でにぎわっている。住民の一人は「砂がなくなっていたら、宮古の観光に役立てられることはなかった」と話した。


 高江洲さんは吉野創立50周年の時の区長や同記念事業期成会委員長を務めるなど、集落のまとめ役として長年活動してきた。90年を振り返って「生活は豊かになったが、若者がいなくなった。行政には若者が喜んで住めるような環境づくりをしてほしい」と話した。

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