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行雲流水
2019年9月3日(火)8:54

【行雲流水】(リベラルアーツ)

 リベラルアーツという言葉がある。古代ギリシャに起源を持ち、自由7科(文法、修辞、論理、算術、幾何、天文、音楽)を基本とする「人間を自由にする学問」を意味した。最近よく使われるようになったのは、複雑化する現代社会では、ある特定分野の専門的知識が求められる一方で、幅広い知識を身につけ、異なる考えが理解できる総合力が必要とされるからである

▼戦後、GHQ(連合国軍総司令部)が第一高等学校(東大の前身)を接収に来たとき、安倍能成校長は、「ここはリベラルアーツカレッジで、聖なる場所である。占領という世俗的な目的には使わせない」と断った

▼総合力を持った典型的な例として、「核力に関する中間子の存在の予言」によってノーベル賞を受賞した湯川秀樹博士がいる。博士は「平和論」や「文明論」、「人生論」でも戦後の社会に大きな影響を与えた

▼博士は、5、6歳から四書五経(『論語』、『孟子』、『大学』等の儒教の中で重要とされる書物)を素読、中学で古典と東西の文学を愛読している。源氏物語は原文で読んでいる

▼博士は随想で書いている。源氏物語では「はっきりしない外形の中で、人物の心の内面に強い照明が当てられている。近代科学は、どこまでも物質的存在の明確さを追求する」。「この二つの世界のどちらにも入っていけることこそ、人間に生まれてきた大きなしあわせである」

▼ところで、新しい学習指導要領について、元日本ペンクラブ会長の阿刀田高は、「高校国語から文学の灯が消える」と懸念を表明している。(空)

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