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社会・全般
2019年11月15日(金)8:54

「沖縄振興を聞く」/トップインタビュー①

沖縄観光コンベンションビューロー(OCVB)会長/下地 芳郎氏

「持続発展可能な観光地」を目指し/「観光×α」の考え方を


下地 芳郎氏

下地 芳郎氏

 【那覇支社】宮古毎日新聞では、現行の沖縄振興計画である「沖縄21世紀ビジョン基本計画」が残り2年半となっていることを踏まえ、同計画による「沖縄振興」に対する成果や評価などを各界に聞く企画を連載する。
 第1回目は「オーバーツーリズム」などが社会課題として取り上げられている「観光」について、沖縄観光コンベンションビューロー(OCVB)会長の下地芳郎氏=平良下里出身=にインタビューを行った。(聞き手・宮国忠広)

 -現行計画の成果と評価-

 県が主体的に策定した同計画のうち最も成果を上げたのは、やはり「観光分野」だと思う。ただ、効果とともに新たな課題も見えてきた。
 現行計画には、策定段階から関わった。当初は、沖縄観光を「1兆円市場」とすることが狙いだった。観光客の滞在日数を「4・5日」と定めて県内観光消費額を1人当たり「約10万円」と見込み、1兆円を達成するため「1000万人観光客」を目標に掲げた。
 つまり、同計画では誘客数だけを目標にしたわけではない。県経済に貢献していくことが、観光分野の大きな目的だった。
 現在では、観光入域客数は、ほぼ達成したものと評価できる。一方で、1人当たり消費単価の約10万円という観光収入での目標には達していない。2018年度の実績で、観光消費額は1人当たり7万3350円。総収入額は約7335億円にとどまっている。
 滞在日数も3・7日で、目標に達していないという厳しい現状がある。観光客に、県内消費をどのように行ってもらうかの「仕組みづくり」が今後のチャレンジになる。
 農畜産物の1次産品も堅調に生産実績を上げているが、製造業のさらなる振興も必要だ。インバウンド客は「メイドインジャパン」の商品を買うことが大半を占めるが、この中に「メイドイン沖縄」「メイドイン宮古」の特産品を組み込めるかが今後の課題だ。

 -県民所得の向上策-

 県民所得の向上は、県経済にとって一番重要な課題だ。本土復帰以降、振興に取り組んでいるが、「県民所得の飛躍的な向上」という成果には至っていない。各分野での実績は上がっているが、それが直接的に所得向上に結びついてはいない。
 日本銀行による分析が明らかにしているが、観光等のサービス産業が多い地域では、所得が向上しないという調査結果がある。
 高度な「モノづくり」を行っている愛知県などと比較すると、1人当たり所得に差がある。その中でも、沖縄は農業や製造業よりもサービス業の労働比率が高い。「労働集約型」の観光関連産業は、1人当たりの賃金を押し上げる要素にはなっていない。所得向上のためには、観光を中心としつつ、「高付加価値」のサービス提供や商品開発が必要だ。
 各産業の高度化と「観光×農業」「観光×製造業」「観光×IT産業」というような「掛け算」の比率を高めていくことが必要だと思う。
 1人当たりの生産性を高めて、企業収益を底上げすることにつながらない限り、労働の「利益分配」という点でも厳しい要素はぬぐえない。「×α」の部分が所得の飛躍的な伸びにつながると考えている。

「県民の幸福」につながる観光地を

 -沖縄・宮古観光の今後の展開策について-

 現行の振興計画「沖縄21世紀ビジョン」の検証段階なので、あくまで個人的な意見だが、1000万人誘客を実現したからといって、次は2倍という理屈にはならないと思う。
 「何のために観光に力を入れるか」には、「県民の幸福につながらなければならない」という大前提がある。「住んでよし」「訪れてよし」に加えて「受け容れてよし」という三つの視点が大事だ。
 世界で起きている「オーバーツーリズム」の中には、観光客が来すぎて、住民が住めなくなった場所もある。まさに「本末転倒」だ。「持続可能な開発目標(SDGs)」を意識しなくてはならないと思う。
 年間約100万人規模の観光客が宮古島に訪れることに対して「住民」「行政」「事業者」が一体となったルールを作ることが必要だと考える。
 宮古島のオーバーツーリズムは、「クルーズ船の寄港増」と「下地島空港開港」で、一度に玄関の間口が広がったことによる。これは、日本が経験したことのない異質なものでもある。言い換えれば、宮古島は従来型の観光が大きく変化する日本の「最前線」に置かれた地域だとも言える。
 クルーズ船の寄港は、直ちに規制を掛けるというものでもない。乗船客の現地消費額は、極めて高いとの調査結果もある。市場が成熟すれば、「宮古島らしさ」を求めるはずなので、対応力が求められる。

 -子どもの貧困や人材育成-

 「子どもの貧困」は、保護者である「大人の貧困」ということなので、給与(所得)が上がらないことを打開する必要がある。「観光×製造業」の様に、より高付加価値の生産物やサービスを提供し、少ない人数でも生産性を上げる工夫が必要だろう。
 また、最近は「人材確保」に力点が置かれているが、労働集約的な「人材確保」と、高度なスキルを持った「人材育成」とは意味が異なる。
 短期的な対策としての人材確保も必要だが、「地域の中で、地域を担う人材」をどのように育成するのかが大切だ。県外、海外の人でも定住して「地域を支えたい」という人を増やすことも大事な要素となる。

 -宮古への期待、思い-

 私が育った時代は、観光客はほとんどいない環境だった。今は、これだけの観光客が訪れる訳なので、「観光を受け容れてよし」とするための努力を島に住む人たちが率先して行った方が良いと思う。
 「海がきれいだ」というだけの宮古島ではなくなった。そこに求められるのは、やはり、人と人との「ふれあい」が大きい。宮古島でも、「一大観光地」の形成は実現できると期待する。「宮古島らしい観光とは何か」という明確な答えを見いだしてほしい。


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