現計画「伊良部ありき」/し尿処理施設整備
許可業者の8割反対/採算取れず、市民に跳ね返り
市長、見直しで意見交換
市伊良部佐和田で進めているし尿処理施設整備計画の見直しを検討している座喜味一幸市長は8日、市が許可している浄化槽清掃業者と意見交換した。業者は現計画について「事前の住民説明会などは一切開かれず、計画が決まってから説明会が1回開かれただけ。最初から伊良部ありきだった」と批判した。許可業者11社のうち伊良部に拠点を置く2社以外の9社は現計画に反対している。
座喜味市長は「し尿処理施設の計画を進めている。伊良部での整備が市民の負担にならないか、業者の経営に悪い影響を与えないか、地下水の影響はどうなのか、ゼロベースで見直したい。都市下水やし尿など一体処理が大きな流れであり、それが好ましいのではないかと考えている。整備費、維持費などのコスト面でも市民に説明していかなければならない。現場の声を聞かせてほしい」と求めた。
市には、し尿処理施設がなく希釈して下水道の浄水施設に投入する方式で処理している。処理量超過や制限されることがあることから、市は新たなし尿処理施設を市伊良部佐和田に整備する計画を2020年3月に決定。今年度から事業着手する予定だったが、市民負担や市財政への影響を懸念した座喜味市長は計画見直しの検討を表明している。
ある業者は「上野のAコープ付近から荷川取(下水道処理施設)までは24分かかる。伊良部まで運ぶと42分で約2倍。1日4、5回運べるところが、2~2・5回になる。時間がかかることで回数が減り、処理量が半分になる」と説明。また伊良部大橋と長山港付近の道路の勾配がきつく、バキューム車の積載量を約7割に抑えなければならないという。
遠距離によって回数が減り積載量も減ることから、経営的に採算が取れなくなり、処理料金を利用者に転嫁せざるを得なくなる。料金は現在の平均1万8000円から、1万円加算され2万8000円になるとの見通しを示した。
現計画について意見を出さなかったのかの問いに業者らは「そういう場が一切なかった。施設を整備する場合、事前に何度か住民説明会を開くのが一般的だが、計画が決まってから説明会が1回開かれただけ。最初から伊良部ありきだった。なぜ伊良部に決まったのか、分からない」と答えた。
また18年から国が進める下水道事業の「広域化・共同化計画」については「情報としては知っていたが、市からは話はなかった」と話した。これに対し、市の担当者は「当時、県から先島は広域化の対象にならないと説明を受けた」と釈明した。