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社会・全般
2010年6月12日(土)12:01

「模合」/コミュニティーの潤滑油

アタラス(いとしい)ムヤイザー(模合座)
 相互扶助の関係から生まれた「模合」。宮古・八重山ではムヤイあるいはモアイ、沖縄本島ではユレーなどともいわれる。歴史は古く、広辞苑ではモアイの意味を「舫=もやうこと」と「催合」の漢字を当てる。17世紀には、多良間島や伊良部島の「模合墓」の記述があり、共同墓とみられる。過去に見られる模合は、現在の民間金融にとどまらず、物によって、「茅(かや)模合」「砂糖模合」「米模合」などがあり、中には「山羊模合」「牛模合」などもあったようだ。最近では、友人(ドゥス)や同期生(アグ)などの親睦模合が多く、中には数十年も続いている仲間もある。=沖国大名誉教授の波平勇夫氏の論文参考。
 

西城中寅の会
 1950(昭和25)年生まれの寅年。今年還暦を迎える。32年前に現会長の平良稔さんがアグをまとめ、今日に至っている。現在21人。本土と沖縄本島から模合金を振り込んで参加する友もいる。毎月1回集まる場所は、アグ・石垣哲郎さんの居酒屋。貸し切りで、その場はそっくりアグの世界になる。
 当時の同期生は3クラス130人余だった。本土や沖縄本島で大成する者、地元では公務員や会社員、自営業、主婦などそれぞれの地位を築いている。この日、浦添市から参加した川満義男さんは「アグはいつ会ってもいいねー、回しマース」とオトーリが回った。
<メンバー>与那覇明俊・友利敏夫・佐久田昌行・川満義男・石垣哲郎・砂川博克・平良稔・宮国吉次・下地栄・砂川良子・塩川君子・奥平洋子・下地のり子・下地ひで子・波名城加代子・上地政江・砂川加代子・下地ツル子・友利美枝子・上原美根子・宮国郁子。 
 
だるま会
 1953(昭和28)年生まれの俗に言う”ニッパチ”生。25歳になった78年に6人でスタート、30年余続く息の長いだるま会。「七転び八起き」を信念に名付けられた。現在、56、57歳と社会的にも中堅のばりばり。メンバーの中には自営業の社長が4人。公務員5人。会社員2人。
 最初は、ヤーマーイ(家回り)から始まった。そのため家族ぐるみのつきあいとなった。子どもたちが成長してからは、積み立て模合で夫婦同伴の本土旅行や、男同士の海外旅行を楽しむ。話題は、仕事のこと、健康のことさまざま。「月に一度、こうしてみんなに会えることは人生の息抜きさ」と声をそろえる。
<メンバー>伊良部和則・上里望・上原資弘・笠原渥・古謝満・高良義正・友利恵徳・長浜哲夫・根間玄俊・真壁勝美・与那覇盛徳
 
七日(なぬか)会
 1942(昭和17)年生まれの午年。平良中6期生。83年、同期生が沖縄本島からUターンしてきたのを励ます意味で模合を発足させた。以来27年間続いている。現在13人だが、多いときで23人もいた。17年生まれで毎月7日に集まることから7日会となった。同期生は、いつまで経っても「アタラスー」だそうだ。
 話題はやっぱり健康のこと。孫やひ孫までいる年代になった。初代幹事長の狩俣さんは「明るい話題にしようと思っていても、気が付いたら体を気づかう話になっている」と笑う。それでも、歌の好きなメンバーは、最後はカラオケで盛り上がる。年に1度は沖縄本島の同期生とも交流会をもつなど、アグの親交を深めている。
<メンバー>狩俣武光・与那覇秀夫・下地國男・松長トミ・伊佐佳子・新垣征男・下地昭五郎・下地朝善・下地健次・喜久川政一・狩俣シゲ・伊志嶺寛・吉原実。
 
模合の地域的分布/沖国大名誉教授 波平勇夫
 農林省経済厚生部の調べた「頼母子講分布状況」によると、この民間金融は全国にあまねく分布しており、とりわけ長野、岐阜、兵庫、広島、山口の各県は他県より高率に普及した地域であり、沖縄県もそれらに次ぐ地域となっている。C・ギアツ(米の文化人類学者)は、模合をrotating credit association と名付けてインドネシアのアリサン、日本の講、中国の標会、ベトナムのホー、アフリカ大陸のカメルーン、ナイジェリア、ガーナでの事例を紹介しているが、もちろんこれだけに尽きない。韓国の契は日本の講同様に広く知られているが、ギアツはこれさえ含めていない。
 
 もちろん、運営方法となると、地域間だけでなく、地域内でかなり異なってくるはずである。そこから社会制度としての模合に新たな課題を発見する。例えば、模合をだれが組織し、だれが参加するかという会員構成、そして会員間の相互関係は基本的な課題である。模合はその目的が順調に達成されている間はよいが、万一何らかの理由で破綻すると、信用保障が解体することから危機管理が必須要件となる。
 
 これまでの調査からいくつかの側面で沖縄、日本本土、台湾、中国福建省、韓国などはそれぞれ微妙に異なることがわかってきた。模合は比較的社会研究に向けた好個の素材を提供してくれそうだ。(『宮古の自然と文化②』より)


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