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社会・全般
2011年2月8日(火)23:00

「高沢歌碑」(行雲流水)

 去る大戦中、宮古には3万人の将兵が配備された。将兵たちは激しい空襲や艦砲射撃にさらされるだけでなく、食糧難と疾病に苦しんだ。肉親の待つ故郷に復員できずに無念の死を遂げた兵士は2500人余に及ぶ


▼補充兵として召集され、朝鮮と「北満」を経て衛生兵として宮古島に移駐し、遺体を焼くことを本務とした高澤義人氏は、戦後、不条理な戦争の実相を告発、平和の尊さを行動と短歌で訴え続けた

▼「餓死兵を夜毎井桁に重ね焼くわれに一粒の涙なかりき」。極限状況で無感覚になるのは精神の防御反応であろう。「犬、猫、みな食いつくし熱帯魚に極限の命つなぎたる島」。「宮古島のサンゴ屑浜ザクザクと踏めば亡き戦友呻くがごとく」

▼1998年、宮古歴史教育者協議会に招かれ、高澤さんは50余年ぶりに夫人同伴で来島した。「餓死兵焼きすてし具体語れと招かれて宮古歴教協に馳す夏の生き残り兵」

▼2005年には、宮古で戦争のあったことを記録にとどめ、反戦平和を誓い行動する記念碑にしようと、高澤義人「歌碑」が、100余名のカンパを得て、上野の野原地区に建立された。歌碑には、過酷な体験を包括的に表現している次の短歌が刻銘された。「補充兵われも飢えつつ餓死兵の骸焼きし宮古よ八月は地獄」(「朝日歌壇」第1席、近藤芳美選)

▼高澤さんが1月28日に亡くなられた。氏を偲ぶ集いが歌碑の前で催され、花を手向け、黙とうをささげ、語り合いがなされた。一人が詠んだ「いしぶみの語りつぐらむ義人の碑」。


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