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社会・全般
2011年4月12日(火)23:00

大震災の後に/伊良部 喜代子

ペン遊ペン楽2011.4.11


 3月11日の大震災からひと月が過ぎた。今も東北ではひっきりなしに余震が続いている。2、3年前から近い将来宮城県で大きな地震が起きると言われていた。予言や占いではなく、これまでの地震データ分析による予測だった。そして本当に大地震は起きた。


 大学の卒業式を一週間後に控えたその日、私は卒業式に羽織る黒のガウンと角帽の貸し出しを受けるため、大学の5階教室にいた。突然ぐらっときた。数日前にも震度5の地震があったので、またかと思ったとたん、すさまじい揺れに変わった。これまでに体験したどの地震より激しい揺れ方だった。しかもかなり長く揺れは続いた。建物全体が軋み、身を捩るように揺れ続けた。あちこちで大きな音がして、教室の隅からは埃が舞い上がった。机や椅子がまるで何かに吸い寄せられるように、窓際に移動していった。

 ようやく揺れが弱まったので、急いで階段を駆け降り校庭に出た。学生と職員100名ほどが、すでに校庭に避難していた。レンガ造りの校舎は所々レンガが剥がれ落ち、通路は波打って長い亀裂が走っていた。ほどなく風が強まり、雪も降りだした。絶えず余震が続く中、雪は激しさを増し、先ほどまでの春めいた天気が嘘のように、気温はどんどん下がっていった。まるで地上の大地震に天の魔神も加勢して、天と地の両方から人間を攻めているかのようだった。寒さに震えながら1時間余り校庭にいた後、歩いて家に向かった。半ば凍った道路は至る所でひび割れ、陥没し、隆起し、交差点の信号は壊れて消えていた。途中のガソリンスタンドの屋根は崩れ落ち、本屋のガラス窓が割れて、本が散乱しているのが見えた。

 地震に備え、家具には転倒防止の金具を取り付けていたため、家の中は思ったほどひどくはなかったが、それでもいろんなものが落ちて壊れていた。とりわけ台所がひどく、食器は半分ほど棚から落ちて割れた。冷蔵庫の扉までが開き、中の食品が床に散らばっていた。電気、ガス、水道すべて止まり、電話も不通となった。寒さが身にしみた。水道が復旧するまでの10日間、雪に濡れて給水車の列に2時間並び、雪を集めて溶かし、水洗トイレの水にした。スーパーマーケットやガソリンスタンドなど、ほとんど開いていなかったが、短時間だけ営業する店が少しあり、その店の前には長い長い行列ができた。寒い中ひたすら順番を待つ人間の群れが、そこここにあった。

 震災から一週間余りが過ぎた頃、津波に襲われた地域に初めて足を踏み入れた。夫がボランティアで瓦礫の片づけに通った場所に、わずかではあるが、おにぎりやカップラーメン、使い捨てカイロなどを持って行った。テレビ画面で繰り返し惨状を目にし、わかっているつもりでいた。だが、目の前に広がる現実の光景の前で、私は立ち竦み、言葉を失い、激しく動揺していた。とても同じ被災者だなんて言えない。海から遠く離れた場所に家があって、津波にあわずにすんだ私と、津波に襲われた人々との間には、何と大きな差があることか。

「すべてを失う」という言葉の重さを、初めて理解できた気がした。そこには、ただの瓦礫ではなく、まっ黒な泥水にまみれ異臭を放つ瓦礫が延々と続いていた。しかもその瓦礫の中には、人間も埋まっているかもしれないのだ。家も車も原型を止めない黒い固まりでしかなく、川には壊れた車が何台も沈み、家の屋根だけが水面から出ていた。到底現実とは思えない現実が、目の前にあった。人間の一生懸命な日々の営みをあざ笑う悪魔、神よりも強大な力を持った悪魔のしわざとしか思えなかった。

 夫の兄一家は、原発から50キロの郡山市で、日々原発の恐怖に曝されながら暮らしている。私は無力感と空しさに苛まれながら、呆然と日々を過ごしている。
 (宮古ペンクラブ会員・歌人=宮城県在住)


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