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行雲流水
2019年6月18日(火)8:54

【行雲流水】(海上の道)

 BS朝日で毎週土曜日、『子供たちに残したい美しい日本のうた』が放送される。6月8日には、「みかんの花咲く丘」や「椰子の実」など6曲が、少年少女合唱団やプロの合唱団によって演奏された。この番組では歌を紹介するだけでなく、歌が誕生した社会的背景や、作詞家、作曲家のエピソードなども紹介される

▼「みかんの花咲く丘」は、のどかな情景を淡々と描写しているが3番は印象が違う。「いつか来た丘母さんと/いっしょに眺めたあの島よ/今日もひとりで見ていると/優しい母さん思われる」。母にずっと会えなかった作詞家の想いが込められており、同じような境遇の子供の多かった時代背景もあってヒットした

▼民俗学者の柳田國男が愛知県の伊良湖岬に滞在した時、砂浜に漂着した椰子の実を見つけた。そのことを後日、友人の島崎藤村に話した

▼島崎藤村は椰子の実の漂泊の旅に故郷を離れてさまよう自身を重ねて詩に書いた。「名も知らぬ遠き島より/流れよる椰子の実一つ/故郷の岸を離れて/汝はそも波に幾月」

▼ところで、柳田は椰子の実が南から流れ着いたように、日本人の祖先も南から日本にやってきたと考えた。それは、中国の貨幣とされていた宝貝を、宮古の近海に求めてきた人々が、いわゆる「海上の道」を北上、日本にやってきたという説である

▼宮古にいて、椰子の実の漂泊や人生、「海上の道」を思い描きながら、『椰子の実』を歌えるのも楽しいことである。(空)

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