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行雲流水
2019年9月12日(木)8:54

【行雲流水】(復原力)

 5年前、韓国の旅客船「セウォル号」が転覆する事故があった。200人以上の高校生が亡くなり、朴槿恵大統領弾劾への導火線となった事件だ。事故原因は、貨物の積み方にあった。コンテナを最上甲板に積んだため、船が傾いたときの復原力を失い転覆したという。いわゆる「トップ・ヘビー」だ

▼大統領制度も権限がトップに集中している。一種の「トップ・ヘビー」だと言えなくもない。トランプ大統領や文在寅大統領の「独善的な」言動が気がかりだ

▼信念の強い大統領は、推進力の強さで復原力の弱さをカバーできると思っているようだ。カバーできない場合、自身や自国民だけでなく、他国民をも巻き込んで転覆の渦を大きくする恐れがある▼米中貿易戦争に備えて、香港当局は中国化を急いでいる。韓国は、南北融和をめぐって権力闘争が先鋭化。東アジアの安全保障環境は液状化してきた

▼環境の変化が激しいと、トップから末端まで知見を共有することは難しい。いきおいトップダウン方式になりがちだ。韓国では、トップが交代するたびに揺り戻しの振り子が振り切れてしまう。振り切れたら、復原力を失う。賛成派であれ、反対派であれ、節度ある言行が必要ではないだろうか

▼歴史の教訓がある。昭和16年11月29日の重臣会議(御前会議)で、開戦の是非を問われた米内光政(元総理)は「ジリ貧を恐れてドカ貧になるなかれ」と進言した。しかし、すでに世論も国会も内閣も「開戦」に振り切れていて、復原力がなかった。4年後、ドカ貧になっていた。(柳)

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